句会の兼題が「良夜」だったので、調べてみた。
秋の天文の季語「良夜」、傍題は「望の夜(もちのよ)」。
旧暦八月十五日の名月の夜をいう。
『徒然草』に「八月十五日、九月十三日は、婁宿(ろうしゅく)なり。この宿、清明なる故に、月を翫ぶ(もてあそぶ)に、良夜とす」とあるように、旧暦九月十三日の後の月の夜をさすこともある。
『俳句歳時記・秋』より。
今年なら、10月6日の満月が「仲秋の名月」に当たり、つまりはその夜が「良夜」だったということになる。残念ながら月の見えない「無月」の夜だったが。
見えない名月を思いつつ、月のある辺りを眺めるという季語「無月」にも、惹かれる。
歳時記にあった『徒然草』の「婁宿(ろうしゅく)」を調べてみた。たぶん月の位置を言っているのだと思う。
おひつじ座の頭の部分あたりに位置する星宿が「婁宿」で、昔の暦では、旧暦8月15日や9月13日に月が婁宿の付近にあることが多かったようだ。
筆硯(ひっけん)に多少のちりも良夜かな 蛇笏
「筆硯」は、筆とすずりだが、文章をかくことや、文筆家の仕事を指す言葉でもあるそうだ。そう考えると、単に黒いすずりに浮いた塵以外にも深い意味合いがありそうだ。
谷戸谷戸に友どち住みて良夜かな 永井龍男
鎌倉で暮らした俳人だそうだ。「谷戸」は鎌倉に多い地名だという。ここ北杜市内にも谷戸はある。谷あいの集落を想像した。美しい月を見ると、誰かを思い出す。月がきれいだと伝えたくなるからか。人恋しくなるからか。
水底に水の湧きゐる良夜かな 上田禎子
むかしは、夜空の月を見上げるだけではなく、池や水たまりに映った月を眺める風流さを愛したと聞く。良夜に美しい水が湧き出でている。月もますます美しく輝いている。
わたしの句は、こちら。
ぐい呑みに九谷を選ぶ良夜かな
十五夜の満月の美しい夜を、詠む。あれやこれやと考えているあいだも、心愉しい時間だった。

ぐい呑みを、いくつか選んでみました。

こちらが句に詠んだ、九谷焼です。

黒織部。九谷を織部に替えると、良夜とは合わなくなるように思いました。

珠洲焼。いまだ復興のなかにある珠洲を照らす満月を、思い浮かべました。

何焼きというのはわかりませんが、水色のは京都の清水寺の近くで、その隣の桜色は高遠に桜を見に行ったときに、その奥は新宿の小田急の雑貨屋さんで見つけました。どれもお気に入りです。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。