「あ、おんなじ」
読みながら思わず口にしたのは、『きのう何食べた?』2巻でシロさんが大根の千切りサラダに帆立の缶詰を入れていたからだ。作り方もほぼ一緒。ひたすら千切りした大根に塩をし、水分をとばしてから帆立缶を汁ごと入れマヨネーズで和える。
違ったのは、シロさんレシピは醤油少々と柚子胡椒を入れるところ。
わたしは、塩と粗びき黒胡椒をたっぷり入れる。
どちらが美味しいかなと、シロさんレシピを試してみた。これが、美味しかった。柚子が効いていた。
「これはこれで、美味しいね」
夫も同意した。
「だけど、いつもの胡椒が効いてる方が好きかな」
なるほどたしかに。そしてわたしは、あればかいわれ大根を飾りにのせる。これも辛みがプラスされ、いい味わいになる。
シロさんに教えてあげたいくらいだ。
だけどシロさん、このレシピはもうなかなか作れないだろうな。
お母さんがよく送ってくれるからと帆立缶を使っていた。その実家の家計が焦げついたことをこの後しばらくして知ることになる。母親はシロさんが喜ぶものをムリして送っていたのだ。倹約家のシロさんは、月々実家に仕送りしなくてはならなくなり、ひどく落ち込む。そんなシロさんにケンジがかけた言葉がいい。
けどさシロさん、シロさん自身ずっとこうやってつつましく暮らしてきた訳じゃない? なら別にこれからだってシロさんは全くおんなじよーに暮らしていけばいいだけの話なんじゃないの?
ゲイのふたりには、結婚することも子どもを持つことも難しい。年老いても誰かを頼ることもができないかも知れない。だからこそ、シロさんは日々節約して暮らしている。
お金のことは、生きている限りどんな人にも降りかかることだし、わたし自身いろいろ考えると不安になることもあるけれど、シロさんの気持ちは、たぶんわからないんだろう。
スーパーで帆立缶を買うのは、ポイント5倍の日だけと決めているが、たまに味わうこの美味しさはやめられない。
ケンジは肉じゃがでテンション上がって、大根サラダは目に入ってませんね。
大根を千切りするの大好き。白くてすごく綺麗。
シロさんレシピで、柚子胡椒と醤油を足してみました。
たっぷり大根2分の1本分。
このサラダのいいところは、洋食にも合うところ。アヒージョと合わせました。
翌朝は、残ったサラダにパプリカと茹でたのらぼう菜をのせて。
☆『きのう何食べた?』メシ第一弾はこちら → 「つくね蓮根」
☆『きのう何食べた?』レビューは → こちら
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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