夫は、写真家だ。
去年ここピントの町で撮った写真を、今回持参していた。撮らせてもらった人に手渡せればと、2Lサイズにプリントして持ってきたのだった。
去年、バルでスペイン語のメニューが読めず、間違えて注文することが続き、ちょっと疲れていた頃に入った「cafeteria TRAZOS」。(カフェテリアと頭につくバルがけっこう多い)
そこで、隣のテーブルの人がオーダーした手羽先の唐揚げがとてもおいしそうに見え、思わず同じものをと注文した。カリッと揚がったジューシーで薄塩味のシンプルな手羽先に、たっぷりレモンをかけて舌鼓を打ったのを忘れられないバルである。
そこで夫は、手羽先の唐揚げを揚げてくれた女性の写真を撮っていた。
そのときわたしたちは、旅も後半に入りうまくいかないあれこれに疲れていて、手羽先の唐揚げは本当においしく、ホッとして心からの笑顔になっていたのだと思う。
言葉は通じなかったが、わたしたちの笑顔は通じたのだろう。
「わたしが揚げたのよ。おいしいでしょう」といっているかのような笑顔を向けてくれた。
先週そこに、ランチに出かけた。
手羽先の彼女はいなかったが、夫が去年の写真を見せ、「この女性がまだここで働いているのなら、写真をプレゼントしたい」と伝えた。
するとスタッフの女性たち4人が仕事そっちのけで、夫がピントで撮った写真を見始めた。彼女の写真以外にも、ピントの町で撮った写真をアルバムに収めていた。
「素敵!」「綺麗!」「えーっ、これがピントなの?」「そうよ、あそこじゃない」「そうだわ」
たぶん、そんな会話をしていたのだと思う。とても、かしましい。
そして3日後、夜飲みに行くと、写真の彼女がいた。
「Hola!オラ」と挨拶すると、すぐに夫だとわかったようだ。彼はいつも首から大きな一眼レフカメラを下げている。
「graciasグラシアス(ありがとう)」以外にも何かいっていたが、聞きとれない。
Google翻訳で「鶏の手羽先の唐揚げは、ありますか?」と訊くと、ぱあっと花が咲いたような笑顔になった。
二度目の手羽先の唐揚げも本当においしく、わたしたちは去年と同じくホッとして心からの笑顔になった。楽しいディナーだった。
帰り際、彼女は少し照れたような顔でスマートフォンを見せてくれた。そこには翻訳ソフトで「写真撮影ありがとうございました」とかかれていた。

ランチを食べにきた昼の「cafeteria TRAZOS」。

お豆のスープの優しい味に、ホッとしました。

鮫の唐揚げ。メニューには、マリネとあったんだけどマリネしてから揚げたのかな?

ランチを食べにきた人でにぎわう、お昼過ぎの店内。

来た~二度目の手羽先の唐揚げ! 大きい!

キッチンの窓には、クリスマス飾りが。

店内奥の大きな絵画には、お店のカウンターが素敵に描かれていました。

大晦日。人であふれかえっていた「cafeteria TRAZOS」。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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