丸々一週間、休暇をもらった。
というのは、『地球の歩き方』のホームページリニューアルのため、自分のかきかけの記事をまった開けなくなってしまったのである。
それに伴い、9月の記事はひとつ少ない3記事でギャラが出ることになった。
月4記事というと、週に1記事かく計算になる。次々に取材したり企画したりしなくてはならない。9月分も済ませた取材もあり、あと2記事かかなくてはと思っていた。
自分でも驚いたのは、思いのほか肩の荷が下りたことだ。
一週間、仕事をしなくてもいい。なんて、開放的な気分なんだろう。
好きでしている仕事でも、追いかけられるように続けていくのは、やはりけっこう負担なのだと知った。
そんな気分で、蓼科の御射鹿池(みしゃかいけ)をひとり訪ねた。
日本画家、東山魁夷が描いた『緑響く』のモチーフとなった池だ。
目にした途端、デジャビュにも似た感覚で、ああ、あの絵の場所だ、とはっきりとわかった。
取材だが、しばらく放っておいていい。コバルトブルーというのか、ターコイズにも近いような水面の色を、ただただのんびりと眺めた。
東山魁夷画伯は、御射鹿池を目にしたとき、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番第2楽章が響いたと語っている。
一頭の白い馬が緑の樹々に覆われた山裾の池畔に現れ、画面を右から左へと歩いて消え 去った――そんな空想が私の心のなかに浮かびました。私はその時、なんとなく第二楽章の旋律が響いているのを感じました。
風景と、無言の語らいをする画家、東山魁夷。
御射鹿池を後にして、長野善光寺のほど近く「長野県立美術館」の「東山魁夷館」へと一泊の旅に出たのだった。
「御射鹿池」は、農業用のため池なんですね。「ため池百選」に選ばれているそうです。
空には雲が広がっていましたが、池は静かでした。
この感じ。ああ、ここだ、と思いました。
『緑響く』の絵はがきです。「長野県立美術館」の「東山魁夷館」で購入しました。
一羽の鴨が、水面をスーッと滑っていきました。
敷地内には入れないので、周囲(半径)を歩いて、変化する水の色を楽しみました。
小さな浮島のようなものも、なにか特別に見えました。
原田マハ『生きるぼくら』に出てきた御射鹿池とは、雰囲気が違っていました。池の畔を歩けるようなイメージでした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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