近藤史恵の連作短編集『ときどき旅に出るカフェ』の続編を見つけた。
主人公は、”ときどき”と同じく、「カフェ・ルーズ」の店主、円(まどか)のもと同僚でOLの奈良瑛子。
タイトルの”それでも”は、コロナ禍二年目から始まるストーリーだからか。
旅先で出会ったスイーツや飲み物を出すのがコンセプトで、月初めにはそのために海外に行っていた円さえ旅ができなくなっていた。
一話目「再会のシュークリーム」では、「カフェ・ルーズ」は店を閉めたままで、瑛子は心配していた。
ロシアのヨーグルトのような飲み物「リャージェンカの困難」
中国や香港の白玉団子「それぞれの湯圓(タンユェン)」
スロベニアの街ブレッドの名物「湖のクリームケーキ」
ポルトガルのB級グルメサンドウィッチ「彼女のためのフランセジーニャ」
ロシア発祥の「鳥のミルク」
高知の田舎寿司「あなたの知らない寿司」
アイスランドのドーナツ「抵抗のクレイナ」
インドのアイスクリーム「クルフィの温度」
中国古来の夏バテ対策ドリンク「酸梅湯(サンメイタン)の世界」
バラエティ豊かなスイーツや料理を散りばめて、しかしサスペンス要素が色濃く楽しめるのが近藤史恵ならではだ。
事件というほどではなくても、カフェに来た客が抱える悩み、例えばコロナ禍で会えなくなった海外に暮らす家族との行き違いなども、探偵役である円が静かに謎を解き、その国に由来するスイーツの優しい甘さで心に支えていたものを解かしていく。
しかしある日、「カフェ・ルーズ」のレシピ帳が盗まれる事件が起こった。「カフェ・ルーズ」は、休業し、瑛子は久しぶりに旅に出る。
「いいですよね。ひとり旅。開放感があって、少し心細くて、寂しくて」
寂しいこと、心細いことがいいことだと言われても、以前の瑛子ならよくわからなかっただろう。今ならわかる。知らない町で、寄る辺ない気持ちになって、ひとりで過ごすことも旅の喜びのひとつだ。
気持ちのすれ違い。挫折。結婚しない女性たちに対する偏見。生きづらさ。そして、理由なく突如向けられてくる悪意。
そんなものと戦いつつ、みな「カフェ・ルーズ」でおいしいものを食べていくのだった。

表紙は、スロベニアのブレッドクリームケーキ。カフェでのんびり、なんて最近していないなあ。

ボルトガルのフランセジーニャは、食べたことがありました。

高知の田舎寿司も。知っているものが出てくるとうれしいですね。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。