『よむよむかたる』に引き続き、朝倉かすみを読んでいる。
よむよむと同じく”老い”をテーマに据えた『にぎやかな落日』は、著者の母親がモデルだそうだ。
「母の心のなかを、かきたかった」とインタビューに応えている。
おもちさんこと島谷もち子は、83歳。北海道の石狩で、一人暮らしている。病院には息子のお嫁さんのトモちゃんがつきそってくれるし、東京にいる娘のちひろは、毎日2度、午後1時と夕方6時に電話してくる。夫の勇さんは、去年、特養に入った。
「お父さんはもう永久に帰ってこない人になったから」
おもちさんは、自分に言い聞かせるようにいう。ちひろがそのいい方を「あの世にいったみたい」と咎めると、急に頭に血がのぼったようになり、肩で息をして言い返してしまう。
「お父さんは特養に入っただけなのっ。今までみたいに、たまにお泊まりするんでなくて、ずっと入ることになったのっ。もうこの家には永久に帰ってこないのっ。でも、特養にはチャンといるのっ。行けば、いるのっ。でも、だから、さびしいのっ」
そして、ちひろが「その通りだね」と相槌を打つと、落ちつく。電話の内容は、今日あったことや食事のこと、病院のこと、体調のことなど。
ちひろが褒めれば、赤ちゃん扱いされているとおもちさんはカチンとくるし、わからないことを聞かれると混乱して怒り出したくなる。
元来、明るく人づきあいが大好きで、どこへ行っても人気者のおもちさんなのだが、最近どうもうまくいかなくなっている。「認知症」という言葉は使われていないが、認知が少しずつ進んでいるようだ。
ある日、ちひろやトモちゃんや近しい人たちが集まって、おもちさんに、上げ膳据え膳のマンション「夢てまり」つまりは、サ高住への入居をすすめた。糖尿病が悪化しているのに、自分の好きなものしか食べず、さらに悪化し入院を繰り返すおもちさんを思ってのことだったが。
おもちさんの人生の落日は、暗くなるばかりではなく、くつくつ笑えるときや、楽しくおしゃべりするとき、ぱぁーっと明るく輝く夕日のようなときもあり、なにしろにぎやかだ。
それはきっと、おもちさんがとっても楽しく生きてきた人だから。歳をとっても、魅力あふれる素敵な女性、おもちさんの人生は続く。

連作短編の章ごとのタイトルは、「たんす、おべんと、クリスマス」「コスモス、虎の子、仲よしさん」など、どれも3つのワード。ワード同士のつながりも、おもちさんの頭のなかのように漠然としています。でも、ラストにたんすとおべんととクリスマスがつながる仕掛けが、用意されていました。
この本読んでみたいな~
タイトルだけでも読みたいな~と思ってしまいます。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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