宮部みゆきの文庫本『新しい花が咲く――ぼんぼん彩句』は、著者が仕事関係のお仲間で始めた句会で詠まれた12句をもとに、短編をかき起こした短編集だ。
短編のタイトルが、すべて俳句になっていて、巻末には句を詠んだ句会メンバーの自己紹介的なものも収められている。
第一話 枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる
寿退社したアツコは、土壇場で婚約者に裏切られた。ハローワークの隣にあったバス停で、不意に行き先も確かめずにバスに乗る。
第二話 鋏利し庭の鶏頭刎ね尽くす
恋愛結婚して子どもも授かったが、姑も小姑もいまだ他人のままだ。息子さえも可愛がろうとしない。それは、夫もまた同じだと〈わたし〉は気づいた。
「夫も義母も義妹も、今でもみちるさんのことばかり考えているんです。折々に思い出を語り合い、みっちゃんならああしたろう、こうしたろうと、楽しそうにさえずっています。わたしや息子の前でも、本当はみっちゃんの花嫁姿を見たかった、みっちゃんの子供なら可愛かっただろうなんて、平気で言うくらいですよ」
第五話 異国より訪れし婿墓洗う
家族揃っての夫の墓参り。72歳の琴子に、何も足りないものはない。夫以外には。その霊園で、むかし近所に住んでいた女に会った。彼女は、勝ち誇ったような態度をとるのだった。
第六話 月隠るついさっきまで人だった
22歳の奥手なお姉ちゃんに初めて彼氏ができた。妹は温かく見守るのだが、お姉ちゃんの小さな異変に気づいていく。
第八話 山降りる旅駅ごとに花ひらき
父方の祖母に似ているというだけで家族じゅうから粗末にされ育った春恵。母方の祖父の形見分けで親戚が一堂に会すが、そこでも古い腕時計をあざ笑うように手渡される。
「あれ、何で春ちゃんがいるの?」
美園は、他人を攻撃するタイミングがいつも絶妙だ。お洒落上手なところと、いじめ上手なところも母にそっくり。つまり、これは才能なのだろう。
どの短編も、サスペンスの要素を含んだ人間模様を描いたものだ。
人は人を裏切る。自分を可愛がるあまり他人をおとしめ、優位に立とうとする。自分は正しくておまえが間違っているのだと巧妙に相手にも思い込ませる。
そうやって、人を軽んじる人間がいる限り、理不尽な扱いを受ける誰かがいる。
人の世の哀しさが、テーマに置かれているように感じた。

和風の表紙絵ですが、小説の中身は現代。近未来や幽霊を描いたものもありました。
「ぼんぼん彩句」というタイトルには、まだまだ俳句の凡手である句会だということ、お菓子のボンボンのように、繊細で綺麗で彩り豊かな句を詠みたいという願いが込められていると、あとがきにありました。2巻、3巻と続くようです。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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