【masquerade マスカレード】 見せかけ、虚構、仮面舞踏会
『マスカレード・ナイト』(集英社)は、東野圭吾のマスカレード・シリーズ第3弾だ。1作目『マスカレード・ホテル』で、コンビを組んだホテルマン山岸尚美と刑事新田浩介が再会する。2作目『マスカレード・イブ』は、『ホテル』主役のふたりが出会う以前の風景を描いた4編の短編集だった。
尚美は、ホテル・コルテシア東京のコンシェルジュとなっていた。
「何があっても諦めてはだめ。ホテルマンは口が裂けても、『無理』という言葉を使ってはいけないの」
尚美が後輩に投げかけた言葉だ。客の要望にはどんなことがあっても応える。どうしても不可能なら納得してもらえるような代替案を示す。コンシェルジュになった尚美は、その仕事にさらに磨きがかかっていた。
そこへふたたび、新田がホテルマンに扮し張り込みをすることになる。
大晦日のカウントダウン・パーティに、ひと月ほど前女性を殺害した「犯人が現れる」という文書が届いたのだ。そのパーティはコルテシアの名物となっている仮装パーティで、新田たち刑事は、新たな事件が起こると踏んでいた。
おもしろいのは、ホテルに集う人ひとりひとりにドラマがあるということだ。
ある女性は、人の顔が見えると落ち着かないから、窓からビルの広告が見えない部屋にしてほしいという。
ある男性は、女性にプロポーズするつもりだから、(年末、予約でいっぱいなのに)レストランを貸し切りにし、彼女に気づかれないように薔薇の花で飾った赤い絨毯を食事が終わる頃用意してくれという。
そのひとつひとつに、尚美は応えていく。プロフェッショナルとして。そして、人としての誠意を持って。そんな尚美が、刑事としてプロである新田に「過信は禁物だ」というシーンが印象的だった。
「ここ数十年で、時計は飛躍的に正確に時を刻むようになりました。少々の安物でも一日に一秒も狂いません。でもその結果、約束の時間に遅れる人が増えた、という説があるのをご存知ですか」
「いや、知らないな。そうなんですか」
「下手に正確な時間がわかるものだから、ぎりぎりまで時間を自分のために使おうとしてしまうんです。結果、遅刻をする。そういう人には、あまり信頼の置けない時計を持たせるといいそうです。遅れているかも知れないと思うから、常に余裕を持って行動しなければなりません」
怪しくない客は誰もいないのではないかと思われる大晦日、仮装パーティ「マスカレード・ナイト」は始まった。ホテルマンとしての仮面。刑事の仮面。犯人の仮面。人としての仮面。みんな仮面を被ってる。
怪しんで怪しんで、最後に疑問が解けた時、人は一切疑わなくなる。
さすが、東野圭吾。ラストまで、楽しませていただきました。
華やかな都会の高級ホテルでの仮装パーティ。それ自体には魅力、あんまり感じないわたしです。推理小説だからおもしろいんだよね。
さえさん、おはようございます!
《何があっても諦めてはだめ。ホテルマンは口が裂けても、『無理』という言葉を使ってはいけないの》という言葉で思い出したのですが、以前、ロンドンの一流ホテルでコンシェルジュをされている方が「情熱大陸」という番組で同じことを言われていました。
無理と言うと客は次からは他のホテルへ行ってしまうからとのこと。
学生時代、ホテルの中の売店でバイトしたことがありますが、いろいろな人が集うので人間観察もできて面白かったです。
東野圭吾は好きな作家なので《マスカレードナイト》を読んでみたくなりました。
papermoonさん
おはようございます♩
へ~『情熱大陸』で、実際にコンシェルジュをされている方が同じことを。
ほんとうにプロ意識を持って仕事に臨んでいる方は、覚悟が違いますね~その覚悟を読んでいくのがまた小気味よくって楽しかったです。
ホテルでのバイト!ほんと、人間観察おもしろそう!
でも、わたしには務まらないだろうなあ。
『マスカレード・ホテル』も『マスカレード・イブ』もホテルが舞台です。併せてお楽しみください♡
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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