吟行で、句会仲間にとうもろこしをもらったので、とうもろこしご飯を炊いた。
年に一度、とうもろこしの旬に食べたい料理だ。
調味は、塩だけ。芯も一緒に炊き込めば、甘みとコクが勝手に味つけしてくれる。
とうもろこしご飯で思い出すのは、彩瀬まるの長編小説『草原のサーカス』だ。
研究者の姉、依千佳(いちか)と、アクセサリー作家の妹、仁胡瑠(にこる)。仕事で大成功したカリスマ姉妹は、しかし、それぞれに失脚する。
その姉の方が、ラスト辺りでとうもろこしご飯を炊いていた。
いただきます、と手を合わせて食事を始めた。仁胡瑠はさっそくとうもろこしご飯に箸を伸ばした。奥歯でほくりと噛み潰すと、ほのかな甘みとバターの風味がしみじみと口の中に広がった。
「香ばしくておいしい」
失脚し、世間からバッシングされる立場となった姉妹。
どんな人も、どんな環境にあっても、料理して食べる。それは変わらないのだと、小説のテーマとはほぼ無関係のシーンにいたく心を奪われた。
そのシーンがいつまでも心の隅に残っているのは、きっと、とうもろこしご飯だったからだ。
細長く実った明るい黄色の小さな粒を食べる、素朴な穀物。
そのシャキシャキした噛み応えにも、優しい甘さにも、食べている、あるいは生きていると感じる食べ物だからなのだと思う。
いただいたもぎたてのとうもろこしと、太ったズッキーニ。
ズッキーニは半分、茄子と揚げ浸しにして。
半分、浅漬けにしました。
とうもろこし、きれい♡
お米1.5合にとうもろこし一本分を入れて炊きました。依千佳の炊いたとうもろこしご飯は、バター醤油味でした。今度やってみようかな。
芯を入れて炊くのは、基本ですね。
サクサクした口当たりで、さっぱりしています。もうひとりの仲間にいただいた焙じ茶も、美味しかった。
残りはおむすびにして、お昼ご飯に食べて、あとは冷凍庫に。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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