先月、偶然『強運の持ち主』のルイーズに会った。
といっても、本のなかの主人公が抜け出してきたわけではない。
本の神様が、久しぶりにいたずらを仕掛けてきたのである。
タロットを始めたという友人に、占い師が主人公の瀬尾まいこの小説『強運の持ち主』を貸したのは、5~6年前になるだろうか。
彼女は、その連作短編集をいたく気に入った様子で、すぐに購入し、タロット仲間に貸したとは聞いていた。
けれど、それから何度も会っていたのだがタロットの話を聞く機会はなく、年数だけが経っていた。
だからその後、彼女が「強運の持ち主」という名のタロットグループで占い師デビューを果たしたと聞いたときには、うれしさと驚きで飛び上がらんばかりだった。
「わたしは、キャサリンの名前で占ってる。ルイーズもいるんだよ」
甲府駅前で月に一度行われるマルシェ「ソライチ」で、「強運の持ち主」と看板を出し占いをするルイーズを偶然見かけたとき、名乗らずにはいられなかった。
「わたし、キャサリンに『強運の持ち主』を貸したものです」
初対面にもかかわらず、本の話で盛り上がる。なにしろ、同じ本を読んでいてそれが大好きだという共通点があるのだから。
そこで最近読んだ本で好きだったのは、と彼女が教えてくれたのが『アイネクライネナハトムジーク』だった。
「えーっと、あの東北大学出身の作家の」
「伊坂幸太郎?」
「それそれ。『アイネクライネナハトムジーク』だ」
「読んだ、読んだ。映画にもなったよね」
伊坂幸太郎を夢中で読んだ頃を、なつかしく思い出す。
仙台を旅したときには、小説の舞台になった聖地の動物園をひとり歩いた。彼の小説の舞台は、若き日を過ごし住み着いた東北大学近隣の仙台周辺が多い。
そんな『アイネクライネナハトムジーク』を、10年ぶりに再読した。たぶん彼女に会わなければ、今も本棚で音も立てず眠っていたに違いない埃をかぶった新刊だ。
本の紹介は、明日。
ルイーズ推しの伊坂幸太郎連作短編集『アイネクライネナハトムジーク』。数年前に文庫本が出たのは、知っていました。
我が家の伊坂幸太郎コーナー。図書館で借りて読んだものや、娘が持っていったものもあり、何冊読んだかは不明です。最近のは読んでないなあ。
そういえば、『チルドレン』が、大好きだった。
そして、『強運の持ち主』。
ルイーズには『コロナと潜水服』を、オススメしました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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