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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

片口~秋の夜長にひとり

平松洋子の料理エッセイ『忙しい日でも、おなかは空く。』の「今日はうちにいたい」の章に、「片口~秋の夜長にひとり」がある。

風に乗って、路地の向こうからこんがり焼けた秋刀魚の匂い。とたんに、ぐーっとおなかが鳴る。そうか、もう秋がやってきたのだな。となれば、恋しくてそわそわするのが夜更けの晩酌である。いや、たったひとりではないのです。相手をしてもらいたいのは片口である。

エッセイは、そんなふうに始まる。

片口を手に取り、つ、と傾ける。すると、穏やかだった表面に流速が生まれ、先端に流れがつく。その勢いのよい滴りを、待ち構えていたぐい呑みがしかと受け止める。さあ晩酌の始まり。

つ、と傾ける。というのが、いいな~深みのある文章だ。

ラスト、エッセイの欄外に、こうある。

気に入りの片口をひとつ持ちたい。選びたいのは、小さすぎず大きすぎず、てにしっくりなじむ肌合いのもの。ぐい呑みは陶器や磁器など、そのときの気分で自在に選ぶと、秋の夜長もいっそう心楽しい。

片方にしか注ぎ口がないから片口という、率直なネーミングもいい。

なくても困らないものだけれど、あると暮らしが豊かになる。楽しくもなる。

片口は、そんな生活雑貨のひとつだ。

食器棚に、片口、4つありました。

ずいぶん前に割ってしまい捨てられず置いていたものを昨年金継ぎし、よみがえった大ぶりの片口。

赤く形が潔い、漆の片口。

花見に出かけた長野県高遠の陶器屋で見つけた、ぐい呑みと対の小さな片口。

へうげものな片口。

でも、見る方向によっては素直な形に見えます。

ぐい飲みや徳利、片口が入っている食器棚です。

 

☆シミルボンサイトに連載中【平松洋子の料理エッセイに誘われて】

 

 

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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