『それでも旅に出るカフェ』に引き続き、今度は原田マハの旅の連作短編集。
3つの短編集と「オール讀物」に掲載した3編は、どれも、ハグとナガラの女ふたり旅の物語だ。
3編は、すでに既読済みだったが、再読してまえに読んだ当時とは異なるイメージを抱いたり、感じ方をしたりして、再読の醍醐味を味わった。
「旅をあきらめた友と、その母への手紙」(『さいはての彼女』収録)
ハグとナガラは、39歳。秋。ナガラの母親が旅の三日前に倒れ、ハグはひとり、伊豆修善寺を旅する。ナガラとのこれまでを思いながら。
ふたり旅の始まりは、会社を辞めたハグを励まそうとナガラが送ったメールだった。
ね、行かへん? どこでもいい、いつでもいい。
一緒に行こう。旅に出よう。
人生を、もっと足掻(あが)こう。
仕事も恋もなくしたハグは、フリーのディレクターとして、前を向いて歩き始めていた。
「寄り道」(『星がひとつほしいとの祈り』収録)
41歳。夏。白神山地のバスツアーに参加したふたりは、黒ずくめのスーツ姿にハイヒールというおよそ山歩きに向かない服装の二十歳過ぎの女性と乗り合わせる。
これ、覚えてる! と思ったけれど、湊かなえの『山女日記』だと勘違いしていた。そんなサスペンス要素も楽しめる短編。
「波打ち際のふたり」(『あなたは、誰かの大切な人』収録)
46歳。春。播州赤穂の温泉で、ふたりは待ち合わせた。ハグは、認知症になった母を看るため、東京と姫路を毎週往復する生活になっていて、近場で一泊だけと出かけたのだった。
「笑う家」
50歳。認知症の母と、姫路の家で暮し始めたハグ。母のごたごたで、オンライン会議の時間に間に合わないことがたびたびあり、顧客が離れていってしまう。
旅には出られずにいるけれど、ナガラの他愛ないメールの数々に癒されていた。
ある日ナガラは、学生時代ふたりで旅した倉敷のことをかいてきた。
いま、ふたりで旅をしてるこの時間を、こんな小さな「笑う家」をわくわくしながらみつめているこの瞬間を、なつかしく思い出しながら、いろいろあったけど、私ら、いまも楽しくやってるやん、それってすごいことちゃう? って、笑い合ってたらええな。
「遠く近く」
55歳。初秋。広島の鞆の浦の温泉で、ふたりは待ち合わせた。ハグの母は認知が進み、ときどき娘のこともわからなくなる。旅してもいいのかと迷うハグを、施設のスタッフたちが送り出してくれた。温泉は、友を思うナガラが、「旅」「遠く近く」「宿」で検索して見つけてくれた場所だった。
「あおぞら」
57歳。ひとり旅をするというナガラに、ハグは腹を立て、ケンカになってしまう。ハグは、母の介護と仕事の板挟みで、金銭的にも余裕がなくなっていた。
”ハグとナガラの長い旅路は、いったん完結をみた”と著者は、まえがきにかいている。
けれどきっと、続いていく。だってふたりはまだ、57歳なんだから。

担当編集者さんのおすすめの言葉には、こうありました。
年齢を重ねると、しがらみも多くなるし、身体にもいっぱい不調が出てくる。
でも、この本を読むと、なんとかなる気がする。
とりあえず、何もかも放り出して、旅に出かけたい!という気持ちに駆られる。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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