珈琲ストーリー。きっと誰にでも、そしていくつもあると思う。
そのひとつをかこうと思う。
娘は小学生の頃、わたしが出かけるたびに珈琲を飲んでいたと、大人になってから告白した。3人兄妹の真ん中っ子だから、4歳下の妹もその恩恵に預かっている。子どもにカフェインがよくないからとわたしが禁じていたのだ。
珈琲と言っても、無論インスタントで、砂糖やらミルクやらたっぷりと入れた珈琲とも言えないような代物だったが、ふたりがさもうれしそうに禁じられた遊びをするさまが目に浮かぶ。珈琲は、大人への憧れなどもほろ苦く感じさせてくれたことだろう。
ごく普通の家族のなかにも、小さな秘密はいくらでもある。そしてそれを打ち明けるときには、ちょっとだけ爽快な気分が伴う場合も多いようだ。水戸黄門の印籠のような。
打ち明けた娘は大学生になっていたと思うが、やはりうれしそうだった。
「インスタント珈琲のカフェインなんか、知れてるのにねえ」
わたしも苦笑しながら、若く未熟な、しかし精一杯母親をしていた自分と、その母親にちょっとした反発を抱えていた幼い娘をなつかしく思い出した。
大人になった娘たちはふたりとも、珈琲を好んで飲むことはない。
今だったら挽きたてのスペシャルティコーヒーを、ドリップしてあげるのにな。
『珈琲焙煎工房 豆玄』のボリビア。浅煎りの珈琲です。
たっぷり淹れて、ゆっくりと味わいました。
おやつにと、蜜柑の皮の砂糖漬けをいただきました。
中身ももらってと、ご近所さん(笑)ありがたくいただきました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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