運慶は、平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した日本でもっとも著名な仏師だ。運慶の仏像は、まるで命を吹き込んだのではないかというほどに生き生きと作られているという。
先月、奈良を旅して「あれ? いないんだ」と思った運慶の仏像たちは、トーハクこと東京国立博物館に出張していた。主に興福寺の四天王立像などだ。
ということで、トーハクに『運慶』を観に行った。
奈良に行った際、ガイドブックで初めて知ったのだが、仏像には大きく分けて4段階の階級のようなものがあるという。上から、
① 悟りを開いた「如来」
② 悟りを求めて修行しつつ人々を救済する「菩薩」
③ 仏の教えに従わない者を懲らしめる「明王」
④ 仏とその教えを守り人々に現世利益をもたらす神々「天部」
これだけ知るだけでも、仏像さんたちにぐっと興味が湧いてきた。そこで『マンガでわかる仏像』(誠文堂新光社)を購入。それを参考に、知識の浅いわたしだが、それなりに運慶の代表的な仏像を考察してみた。
運慶デビュー作『大日如来坐像』平安時代(奈良・円成寺)
「大日如来坐像」は、最も位の高い〈衣一枚で出家した釈迦の姿を再現しようと造られた如来〉のなかでも特別な存在で、如来にはない宝冠と装飾品を身につけ、宇宙の中心的存在だということから不動の坐像であり立像はない。
この仏像は運慶20代のときの作品。それまで如来像の足は平らに作られていたが、運慶は人間のような丸みを表現している。
インドの兄弟学僧『無著菩薩立像』『世親菩薩立像』鎌倉時代(奈良・興福寺)
〈4つの階級以外の仏像のひとつ、高層と呼ばれる信仰の対象となった実在した人物の像〉5世紀のインドで唯識学派を大成した学者兄弟をモデルにしている。無著の内省的で静かな表情と、世親の能動的な表情の対比が素晴らしいと評判。
ポスターで立ってる『毘沙門天立像』鎌倉時代(神奈川・浄楽寺)
〈守りの役割を持つ天部〉の東西南北を守る四天王のひとりで、北を守る多聞天(仏が説法する同情を守りながら説法に耳を傾ける、四天王のリーダー的存在)は単独で祀られることもあり、そのときには「毘沙門天」と呼ばれる。護衛のため険しい顔をした像が多いが、この像はやわらかな表情をしているのが特徴。
赤い顔の童子『八大童子像』の『制吒迦童子 』鎌倉時代(和歌山・金剛峯寺)
「制吒迦童子」は〈動かない守護者で最も位の高い明王、不動明王〉につき従う脇侍、八大童子のひとり。個人的には右から見た横顔が非常に美しく思わず見入ってしまった。八大童子すべてを従う不動明王は数少なく、金剛峯寺の八大童子は特別公開時にしか見られない。
なーんて、にわか勉強だけど、少し仏像の世界に近づけた気がする。
運慶の仏像たちのリアルさは、展覧会を観終えて外へ出て、あらためて感じた。木陰にたたずむ人、門の脇で人待ちをする人などが一瞬、像のように見えたのである。運慶の造った仏像には、たぶん本当に命が吹き込まれている。人と見まがうほど、生命力にあふれているのだ。
トーハク本館です。10月なのに夏日でした。暑かった!
大きなユリノキの左向こうは表慶館です。
『運慶』は平成館で開催中です。11月26日まで。
実力に合わせて(笑)購入した『マンガでわかる仏像』が、けっこうおもしろい。
仏像の階級も、わかりやすくピラミッドになっています。
「運慶」と聞くだけで胸がぞくっとします。何を知っているわけではないのですが。
写実的で力強い様式を作り上げ、鎌倉時代の彫刻界を支配した、などとありますが、そして今、何にぞっこん惚れたのかも思い出せないまま、でも一言コメントしたくて。
如来と菩薩はどう違うのか?と仏像に興味のある友人と話した何年か前のことを思い出しましたが、4段階の「天部」は初めて知りました。今は漫画からもいろんな知識が得られるのですね。
「大日如来坐像」の足が平らに作られていたのに運慶は人間のような丸みを表現した、と。20代の運慶の息づかいを感じます。
「展覧会を観終えて外へ出て、木陰にたたずむ人、門の脇で人待ちする人たちなどが一瞬像のように見えた」に感性豊かなさえさんを感じ楽しくなりました。
Yasukoさん
仏像に知識の浅いわたしですが、先日奈良へ行ったときに、仏像の階級が大きくは4段階あると知り、ちょっとでもわかると楽しいものだなと目から鱗でした。
Yasukoさんは、以前から仏像に興味をお持ちなんですね。
金剛力士、四天王、梵天、帝釈天、八部衆、十二神将、吉祥天、大黒天、弁才天などみーんな「天部」なのだそうです。
覚えきれませんが、知らない世界を知るのって楽しいなと思いました。
観終えて外に出て、ほんとうにそう見えたんですよ~そういう人も多いんじゃないかと思います。少ないのかな?(笑)
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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