引き続き、原田マハを読んでいる。
「東山魁夷の絵が、出てくるんですよ」
原田マハを読み始めたという若い友人に、教えてもらい図書館で借りた。
麻生人生(じんせい)は、24歳。
高校でいじめにあい、中退。日雇い派遣で働くも、突然解雇されてしまう。引きこもり生活に入ったのは、20歳のときだった。
母子家庭で、母と二人きり。食事はコンビニのおにぎりとカップ麺。そんなある日、母が、5万円と置き手紙を残し出て行った。もう、疲れたと。
手紙と一緒に、蓼科の祖母からの年賀状が置いてあった。
私は余命数ヶ月、残された日々を生き生きと暮らしていこうと思っています。あなたと人生に、もう一度会えますように。私の命が、あるうちに。
人生は、子供の頃の記憶と年賀状の住所を頼りに、祖母のもとへ向かう。しかし、なつかしい蓼科の家にいた祖母は、人生を見て言うのだった。
「……どちらさま?」
ばあちゃんは、認知症を患っていた。
ばあちゃんと、人生と、人生の父と再婚した女性の娘だという21歳のつぼみ。
3人の奇妙な同居生活が、始まった。そして自然なやり方で、代掻きもせず農薬も使わずに米を作る暮らしが。
東山魁夷の「緑響く」。絵の舞台となった御射鹿池(みしゃかいけ)は、ばあちゃんの大好きな場所だった。
――緑の中を歩いていくこの白馬は、母さんなんだよ。
画集をくれた死んだ息子、つまり人生とつぼみの父が、ばあちゃんに言ったという。
ばあちゃんの行ったり来たりする記憶と向き合いながら米作りをし、人生とつぼみは、地に足をつけ生きていくのだった。
人生とつぼみ。後ろには、反対側から見た八ヶ岳連峰が。
裏表紙には、ばあちゃんが。
韮崎図書館は、小説がたくさんあって便利に使わせてもらっています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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