久しぶりに表参道の交差点で信号待ちをした。
そこは、20年ほど前に会社の最寄り駅だった場所で、何度も歩いた交差点だ。
赤信号をぼんやり眺めていたら、すっかり忘れていた記憶がよみがえった。
交差点を渡った先にある花屋で、よく花を買った。不定期に出勤する際オフィスに飾るための花を買い求めていた。
わたしも夫もまだ若く、立ち上げて数年の会社を少しでも居心地のいい空間にしようと、様々な角度から考えていた。花を飾ろうと思ったのもそのひとつだったのだろう。オフィスを明るく居心地のいい空間にと気づかうのは今でも同じだが、若さと情熱があるからこそできることもあったようにも思う。
いつから花を飾らなくなったのか。少し広めのオフィスに移転し観葉植物をいくつか置くようになったからか。自宅を山梨の田舎に移したときか。
花を飾らなくなったことが、悪いということではない。
ただ通りすぎた道を、なつかしく思い出すだけだ。
次の瞬間、信号が変わるか変わらないうちに、グリーンのブラウスを着た女性が早足で交差点を渡り始めた。そのブラウスは、変わったばかりの青信号と同じ色合いだった。20年前、この交差点をやはり早足で渡っていた自分と、ハッとするような緑の背中が重なった。
表参道の交差点です。都会だなあって、あらためて思います。
東京の空も、青いんだよなあ。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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