子どもの頃は、家に風呂がなく、銭湯通いをしていた。
弟と妹がいたわたしは、近所のおばちゃんに髪を洗ってもらったりしたことや、たまに珈琲牛乳を買ってもらったこと、家に帰りつく頃には洗い髪が芯まで冷えていたことなどを思い出す。
その銭湯、かなり広かったように記憶しているが、自分が小さかっただけなのかも知れない。大きな富士山の絵が広い浴槽の壁面に広がっていたから、広く思えたのかも知れない。
温泉と銭湯の違いはと言えば、もちろん自然に湧き出た温水が温泉であり、銭湯は水道水を沸かした湯だということだとは知っている。だが幼い頃、銭湯に慣れ親しんできたわたしには、富士山の絵があるなしが、温泉と銭湯の大きな違いのようにも思える。
北杜市には、8町村が合併する前の名残りで、公営温泉が10か所もある。
どれもこじんまりとしていて、規模で言えば銭湯と変わらないような素朴なごく普通の温泉だ。そのひとつ『たかねの湯』に、正月休み最終日、夫婦でのんびりとつかりに行った。前日ご近所さんたちとの新年会でたらふく呑み、正月の酒を抜こうというというのが意図するところだ。
『たかねの湯』の浴槽はガラス張りになっていて、木々に囲まれ外から見えることはないが、湯につかりながら外の景色を眺められる。タイルはほぼ普通の白で、もちろん大きくも小さくも富士山の絵はない。
「温泉だから、富士山はないんだよなあ」
窓の向こうには、茅が岳が広がっている。
「ん? とすると、こっちには?」
90℃ほど小さく振り返ると、そこにはしっかりと富士山の姿があった。
「おっ、富士山、みっけ」
銭湯のほど大きくはないけれど、雲をはらんだ優しい顔をした本物の富士山が、こちらを見て笑っていた。
富士山の絵があるなしが、温泉と銭湯の違いというわけではないのだ。この歳になり、新しい発見をした。いくつになっても、新しい発見はありそうだ。
『たかねの湯』です。市内在住の大人は410円。12枚綴り4100円2枚分お得な温泉手形を購入しました。夫婦で行けば、6回ずつ。
黒酢ジュースの販売機がありました。珈琲牛乳もフルーツ牛乳もありますよ。
図書コーナー。血圧も測れます。
コインマッサージ器。それぞれ10分100円、10分200円、15分200円。
たかねの湯、随分前に行ったな~‼
甲斐市には公営の湯、双葉、竜王、敷島に各1箇所づつ在ります。市民はたしか、300円…お安いですね。私的には個人の銭湯♨好きです。甲府市にも、幾つかありますが、だんだん少なくなって来ていますが、残念です。
浴室の富士山の絵は、浴室を奥行き広く見せるためらしいですよ。
悠里さん
そうなんですか?「たかねの湯、素朴でのんびりできますよね~
甲斐市の温泉にはいったことありません。
300円は、今どきお安いですね~
そっか、銭湯の富士山は、広く見せるためだったんですね。なるほど~
こじんまりしてるって言っても、山梨の温泉は広いのかも知れないですね~♩
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。