ラストシーンのない小説を読んだとき、人は何を思うか。
湊かなえ『物語のおわり』(朝日文庫)には、第1章『空の彼方』に、その小説(プリントされた原稿)「空の彼方」が置かれていて、北海道を旅する人たちの手から手へと渡っていく。そして、それぞれがそれぞれのラストシーンを心に刻んでいく。以下、未完の小説「空の彼方」あらすじ。
山あいの田舎、小さなパン屋で育った絵美は、幼い頃から空想癖があり、山の向こうへの憧れを抱いていた。中学生になり、パン屋の常連の高校生ハムさんと恋に落ちたが、彼の大学進学で遠距離恋愛となる。手紙をやりとりするうちに、絵美は推理小説をかき、彼に送るようになった。彼が町に戻り、もうすぐ結婚というとき、絵美の小説がひょんなことからベストセラー作家の目に留まる。東京へ出てその作家に師事したいと言う絵美に、ハムさんは反対する。それでも絵美は、意を決して駅に向かうが、そこにはハムさんの姿があった。
第2章『過去へ未来へ』【智子35歳】舞鶴から小樽へ
智子はお腹の子とともに、舞鶴から小樽へ向かうフェリーに乗っていた。
20年前に亡くなった父と乗った船だ。旅に出たのは父と同じ直腸癌の宣告を受けたからだった。産んでいいのか、けれど産みたい。そんな迷いのなかにいたとき、「空の彼方」を手渡される。
第3章『花咲く丘』【拓真30歳】富良野・美瑛
父が死に、写真家になる夢を捨て、不本意ながらかまぼこ工場を継ぐことになった。拓真は、写真家を目指す原点となった富良野のラベンダー畑と美瑛の写真美術館『拓真館』を訪れる。そこで出会った智子から「空の彼方」を手渡された。
第4章『ワインディング・ロード』【綾子22歳】旭川
テレビ番組の制作会社に就職が決まり、自転車でツーリングの旅をする綾子。
だが文芸同好会で出会い、尊敬もしていた彼は、それを批判し離れていった。
文学の才能がないことに気付いたからって、テレビの制作会社なんて、プライドないわけ? 夢を叶えるための努力を放棄した人間が、安易な世界に飛びついて祝杯を挙げるなんて、本物のダイヤを買えないから偽物のダイヤで満足するのと同じじゃないか。
第5章『時を超えて』【木水42歳】摩周湖
一人娘が特殊造形を勉強しにアメリカへ行きたいという。猛反対した木水に、妻と娘は出ていった。安定した生活を求め公務員として働いてきた日々を否定され、娘を殴ってしまったからだ。
こんな田舎で公務員やりながら自己満足に浸ってる人に、わたしの気持ちなんてわかるはずない。なんでこんなつまんない人の娘に生まれちゃったんだろう。
第6章『湖上の花火』【あかね42歳】洞爺湖
貧しい家に育ち、がむしゃらに働いてきたあかね。脚本家を目指す彼は、「あかねは金、金、金、なんだよな」と言い去っていった。
第7章『街の灯り』【佐伯85歳】札幌
元教師の佐伯は、不登校の孫娘に正論をかざし、家族とぎくしゃくしていた。学友の退職記念パーティの席も楽しいとは思えない。
第8章『旅路の果て』【萌14歳】知床
いじめの発端は自分にあった。自分の嫉妬がいじめを生んだ。それを知っているのは萌だけだ。落ちていった友人に何をすることができるだろう。
夢を追い求める人、夢をあきらめる人、夢を手助けする人、夢を妨害する人。
各章で、みな絵美やハムさんを自分に重ね合わせ、ラストを思い描いていた。
裏表紙の紹介文にはこうある。「あなたの『今』を動かす、力強い物語」
わたしなら、どんなラストにするだろう。
無数のラストを楽しめる、これまでにない連作短編集である。
リバーシブルカバーは、ちょっと分厚いです。
裏面は、原稿用紙に手がきの文字のカバーでした。
湊かなえのメッセージカード付き! 「カタナ」というのは木水が乗っていたバイクの名です。北海道の書店員さんからのおススメの声の付録も。
裏には、書店員さんからのおすすめスポットガイドマップもついていました。北海道、行きたくなるなあ。
さえさん、こんばんは!
この小説、すごく面白そうです。
同じ小説のラストシーンを境遇が違う人が描くと全く違う内容の終わり方になりますよね。
ハムさんが善人とされたり悪人扱いされたりと。
ところで、さえさんはどういうラストシーンを思い浮かべましたか?
文才のあるさえさんが描いたラストシーン、気になります~!
この小説、読んでみますね。
papermoonさん
おはようございます♩
おもしろそうって思っていただけて、うれしいです~
そうそう。ハムさんが善人だったり悪人扱いされたり。
それからハムさんに感情移入したり、男女逆転したり。
おもしろかったです♡
わたしは?
やっぱり普通に絵美に感情移入しちゃうかなあ。でも、絵美の夢は応援したいけど、そう簡単にかなう夢じゃないってこともわかるし。
papermoonさんも、ぜひ読んでラストシーン、思い描いてみてくださいね~
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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