毎週のように、雪が降り、積もっている。
3月に入り一週間。二十四節気では、啓蟄だというのに、虫たちも雪の下でまだまどろんでいるだろう。
「春の雪」は、春の天文の季語。
春の雪青菜をゆでてゐたる間も 細見綾子
雪の白と青菜の緑のコントラストが、鮮やかな句。
こはだから握ってもらふ春の雪 長谷川櫂
雪のなか、お寿司屋さんにいるのだろうか。うらやましい。きっと、街なかで詠んだ句だ。
傍題には「春雪(しゅんせつ)」「淡雪(あはゆき)」「沫雪(あわゆき)」「牡丹雪」「桜隠し」などがある。
淡雪は淡い雪の意で歴史的かなづかいは「あはゆき」。沫雪は泡沫(うたかた)のように消えやすい雪の意で歴史的かなづかいは「あわゆき」。
微妙な違いだ。
淡雪のつもるつもりや砂の上 久保田万太郎
淡い雪なのに積もるつもり? 崩れゆくような砂の上に。
沫雪のことに触れたる誄詞(るいし)かな 大石悦子
誄詞とは、生前の功績をたたえて哀悼の意を表わす言葉だそうだ。
「雪の果(ゆきのはて)」は、最後の雪を表す、これも天文の季語。「名残の雪」「別れ雪」「忘れ雪」などの傍題がある。
松に鳴る風音堅し雪の果 石塚友二
松林の風音の堅さには、馴染みがある。明るい雰囲気も持つ「春の雪」とは違う淋しさのようなものが詠まれる季語のようだ。
わたしに降ってきたこの雪は、どんな雪だったのだろうか。
一昨日の朝。
積雪、10㎝くらいかな。
家の北側に広がる風景です。
堰沿いの道に、木が倒れていました。隣の土地との境目の木。
夫がチェーンソーで切って、車が通れるように片づけてくれました。
何度も雪が積もり、そのたびに堪えていたのが、堪えきれなくなったのでしょう。
堪えて堪えて、それでも折れてしまう。そういうこと、人の心にもある気がします。
たぶん、あちらこちらで倒木があったんじゃないかな。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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