ウッドデッキに、風が落ち葉を飾っていた。
洗濯物を干しながら、目を細める。庭のもみじがようやく赤くなったと思ったらハラハラと舞い始めている。隣りの林のクヌギやら何からもいっせいに落葉を始めた。とうとう、冬が来た。
外だけではなく、家のなかにも冬は来ている。毎朝土鍋で炊いているご飯だが、夏よりも炊きあがるまでに時間がかかるようになった。
考えてみれば当然だ。夏、湯を沸かすのと冬、沸かすのでは、かかる時間も違って当たり前。炊飯器で炊いていたら気づかないほどのわずかな違いだが、美味しく炊こうと思ったらその違いに目を向けざるを得ない。
蓋の穴から思いっきり水蒸気が吹きだしてから、1分ほどで火を止める。10月までは8分で炊けていたが、8分30秒になり、今は9分炊いている。
自動消火タイマーで炊いているのだが、炊きあがりの頃には、目を離せない。昔の人は、時間など計らなかったのだろうかと遠い時代に思いを馳せつつ、シューッと吹きあがる白い蒸気の匂いを嗅ぐ。いい匂い。キッチンに立つ者の特権だ。
かまどの火を起こし、鍋でご飯を炊いていた頃の人たちは、もっともっと季節の移り変わりと近いところにいたのだろう。天候や気温や太陽の位置や月の動きなんかとも、身近なかかわりがあったのだろう。
ひとつ便利になるということは、ひとつ何かを失くしていくということなのだろうか。
ご飯土鍋の水蒸気に、ふとそんなことを思った。
ウッドデッキの落ち葉たち。
なかなか紅葉しなかった庭のもみじも赤くなりました。
9分炊いて10分~15分蒸らしているご飯土鍋。万古焼です。
残り物オンパレードのにぎやかな朝ご飯もあれば。
鍋の残りで、シンプルブレックファーストもあります。今年は葉つき大根をいっぱいいただいて、毎朝大根葉の炒め煮を食べられます。幸せ♡
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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