役所広司×西川美和ムービー『すばらしき世界』は、実話をもとにした佐木隆三「身分帳」を原作に置いた映画。

〈cast〉

三上正夫【役所広司】殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所で過ごした男。

津乃田龍太郎【仲野太賀】小説家を志すTVディレクター。三上にドキュメンタリー制作を持ちかける。

ほか橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美など。

〈story〉

13年の刑期を終え出所した三上正夫は、十代の頃からヤクザと関わりを持ち、人生の大半を刑務所で過ごしてきた殺人犯。

カッとなりやすく暴力も辞さないところがあるが、心根には曲がったことが大嫌いで、困っている人を放っておけない優しさを持つ。

そんな彼が、社会で生きていくのは生半可じゃなかった。

生活保護申請、職探し、働くための失効した運転免許証取得も元手が必要だ。

そこへTVディレクター津乃田と吉澤（長澤まさみ）が番組ネタにしようと取材を持ちかけてくる。津乃田は初め、殺人を犯した三上に対し恐れを抱いていたのだが、関わっていくうちにひとりの人間としての三上に惹かれていくのだった。

三上は、圧倒的に魅力的な人物だ。切れ味のいいナイフの奥に温かな血の通った人間らしさを持っている。

津乃田のみならず、ナイフの奥を垣間見て惹かれていく人たちが印象的だった。

一度は先入観から万引きを疑ったスーパーの店長（六角精児）。ヤクザに関わる人間は生活保護を受けられないと突っぱねようとしたケースワーカー（北村有起哉）。

実際に殺人を犯した人間がそばで暮らしていたら、と思うと彼らの行動が希有なものに見えてくる。

西川美和監督作品で特に好きだった映画は『永い言い訳』だ。人の心の一筋縄ではいかないところに焦点を当て描いていた。

『すばらしき世界』の三上にも通じている。

人はみな多面性を持ち、自らのそいう部分を抱えきれずに生きているものなのかもしれない。

役所広司は67歳。映画『PERFECT DAYS』で、カンヌ国際映画祭 男優賞を獲得したばかりですね。これまでは『Shall we ダンス?』や『THE 有頂天ホテル』のコミカルなキャラクターが、わたしのなかの役所広司でした。

☆画像はお借りしました。