田舎町に住む女の子が、大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい。
モデルみたいに美少女だとか。
いや、わたしは学校一のデブだったと聞いたけど……。
そんなリード文から始まるこのミステリーは、自殺した有羽について、人気美容整形外科医の久乃に向け、8人の登場人物がひとり語りする形で構成されている。
久乃の同窓生で、脂肪吸引のためドアを叩いた志保。
有羽の同窓生で、鼻を整形しに来たタレントアミ。
久乃の同窓生で、元カレでもある弦多と、その息子で、有羽と同窓生だった星夜。
志保の妹で、有羽とアミを中学で教えていた希恵。
高校で有羽を担任していた、肥満経験のあるガリガリの登紀子。
久乃、志保、弦多と同窓生で、有羽の母親、八重子。
痩せたい。美しくありたい。
女性なら誰もが持つであろう願望だと疑いを持たず、美容整形に光を見出していたはずの久乃にとって、有羽の死は、闇の部分に一石を投じ波紋を巻き起こす出来事だった。
—ドーナツは真ん中においしい成分が集まるんだよ。それをくりぬいて固めて、くりぬいて固めて、最後に残ったおいしい成分がぎゅっと詰まったドーナツの真ん中は、作った人へのご褒美なんだって。
学校一太ってはいたけれど、人一倍明るく運動神経抜群で皆に好かれていた有羽。彼女は、なぜ死を選んだのか。
久乃は考える。
ひとりひとりがジグソーパズルのピースとなって社会という一枚の絵ができあがるけれど、皆がそこにうまくはまれるとは限らない。自分というカケラの大きさや形を持て余す人もいる。
この絵の中に自分の居場所はないのかもしれない。とはいえ、簡単に次の絵を探すことはできない。無理に押し込むと、周囲のバランスも崩れてしまう。
だからといって皆が同じ大きさ形になってしまったら、つまらないじゃないかと。
引き込まれ度が半端なかった。やっぱ、湊かなえはすごい。
赤い文字と紐栞が、恐ろしいミステリーを連想させます。湊かなえという文字も。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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