「希林流生き方のエッセンス!」と帯に謳われたこの本には、昨年亡くなった樹木希林さんが生前かいた数多くの文章、語った言葉を集めている。
【樹木希林】
1943年東京生まれ。20歳で女優デビュー。21歳で俳優の岸田森と結婚、25歳で離婚。30歳のときにロックンローラーの内田裕也と再婚。33歳、長女出産。34歳のとき芸名「悠木千帆」をオークションに出し「樹木希林」と改名。38歳のとき内田裕也が勝手に離婚届けを出すが、離婚無効の訴訟を起こし勝訴。60歳、網膜剥離で左目の視力を失う。61歳、乳がんが見つかり翌年右乳房を全摘。その後、全身にがんが転移するなか75歳で亡くなるまで女優として生き続けた。
表紙の写真は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』のポスターに使われたもので、自ら「顔施(がんせ)」だと思うほどに、希林さんのお気に入りだったそうだ。「顔施」とは仏教用語で、にこやかな表情で人に接すること、穏やかな笑顔を施すことをいう。
出来上がった写真を見たとき、私は自分だと思えなかった。穏やかないい顔で笑っていました。私は普段、自分がそんなにいい顔をしていないのを知っていますから、ああこれはオカンの顔施だなと思ったんです。
そんな素敵な笑顔を見せた希林さんだが、映画『万引き家族』では、入れ歯を外して撮影に臨む。
人間が老いていく、壊れていく姿というのも見せたかった。高齢者と生活する人も少なくなって、いまはそういうのをみんな知らないでしょう?
病を抱えていたからか、こんな言葉も残している。
お経の中に、「一生にも二生にも三生にも」という言葉があるんですね。何だ、一生じゃないんだ、まだ二生もあって、三生もあって、人間はいろんな試練や出来事に遇うという。だったら何も今生をここからここまでと決めずに、まあ、今生はこういう顔をして生まれて来たけど、次はまた違う姿かもしれないし、魂の着せ替え人形じゃないけど、さほど「私の最期」と考えなくてもいいなと思ったりもするんです。
そして、役者として妥協はしない人だった。
小さなことの積み重ねが、映画のなかの「日常」にリアリティーを加えていく。でも、それは普段からいろいろ見ていないとできない。現場でいきなり思いつくものでないのよ。役者は当たり前の生活をし、当たり前の人たちと付き合い、普通にいることが基本。わたしは電車に乗るし、Suicaも持ってますよ。
不思議だったのは、この本を読み終えて、気持ちがすっきりとし、軽くなったことだ。もちろんわたしは、希林さんのような波瀾万丈な人生を生きてはいない。そのごく普通に暮らすわたしの胸の奥にも届く言葉が数々あったということだろう。こんな言葉もあった。
私の中にあるどろーっとした部分が、年とともになくなっていくかと思っていたんだけれど、結局は、そうじゃなかった。でも最近は、”それがあっていいんだ”と思えるようになって。少し、ラクになりました。
希林さんだって、悩み考え自分のなかの何かを否定したり苦しんだりするごく普通の人間だったということなのかも知れない。
ほんとうに素敵な笑顔ですね。
1973年秋、内田裕也氏との結婚式で。
裏表紙には、NHK朝ドラ『はね駒』の撮影現場で撮ったという写真。1986年だから43歳でしょうか。もっと幼いような可愛らしい雰囲気ですね。
樹木希林さん、ドキュメンタリー番組にしても、この本にしても、
自分の気持ちの隠れた深い部分まで、上手に見つけ出す人なんだなって感じます。
気持ちのまま、ほんと自然体って感じです。
いい本ですね。
スローペースな読書しか出来ないけれど、読んでみたいって思いました。
今は人に借りた分厚い本を読んでいるお陰で、今まで以上に読んでみたい意欲が出ています。
さえさんの紹介してらっしゃる本はいつも面白うそうなのが多くて、
そんな時はスマホにメモってるんです。(笑)
とりあえず、今の本を頑張って完読しますね。
ユミさん
>自分の気持ちの隠れた深い部分まで、上手に見つけ出す人
まさにその通りですね。
こういう本は、スローペースで読むのにうってつけですよ。
ゆっくり自分なりに読み解いていく。そんな本だと思います。
フレディ・マーキュリーの本を貸してくださったお友達のこと、かいていましたね。
分厚い本は、それだけで敬遠しがちですが、楽しく読めるなら分厚い分楽しみも増えますよね~♩
『一切なりゆき』っていうタイトルの言葉からグッとくるこの本、ぜひ手にとってみてくださいね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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