優しい味のものばかり食べているとピリ辛味が食べたくなるように、突如サスペンスが読みたくなり手に取った。
【サスペンス】
suspense 「未解決、不安、気がかり」の意。
映画、ドラマ、小説などの物語の展開が、観客や読者に与える不安と緊張感。また、その映画、ドラマ、小説など。
精選版 日本国語大辞典より
小池真理子の6編から成る短編集。
「会いたかった人」
花形心理学者として活躍中の小夜子は、ふとしたきっかけで25年前の親友に会うことになる。けれど、あんなに会いたかった親友は微妙に雰囲気が変わっていて、違和感がやがて恐怖へと変わっていく。
「結婚式の客」
捨てた女の母親が、なぜ自分の結婚式に参列しているのか。保身から、明弘は憑かれたように女を捜すのだが。
「あんたの娘が死んだのは僕のせいじゃない。あんたは気が狂ってる。いつまでたってもあんたは、小学生の娘を抱えた頭のおかしい母親なんだ。娘が苛められると、飛んでいって、苛めた相手に仕返しをしようとする馬鹿な母親なんだ」
「寄生虫」
母ひとり娘ひとり。娘が結婚した良江は、淋しくてたまらない。娘を取り返すべく、彼女がとった行動は。
「木陰の墓」
大学生の純一は、隣の別荘の夫婦が夜中に庭を掘って大きなものを埋めるのを見てしまう。犬の墓だと言うが、隣の運転手が行方知れずになっている。純一は調べ初めた。
「運の問題」
盗み癖が直らない大学教授は、ある日財布を盗んだ女から、見逃してやるからと殺人を持ちかけられる。
「先生の罪なんて、もう忘れたわ。そんなことはどうでもいいの。私の悩みは先生みたいな方にしか打ち明けられない種類のものなのよ」
「甘いキスの果て」
マンションと美しい服を与えられ人形のように愛人をしてきた7年にピリオドを打つことに決めた順子を、洋一は脅した。これまで使ってきた金を返せと。
不安と緊張感こそが、サスペンス。
そういう意味では、「結婚式の客」と「運の問題」がよりサスペンスを満喫できたと思う。
1992年に出版された文庫本でした。平成の初めですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。