今年の読書初めは、瀬尾まいこの長編『夜明けのすべて』。
2月9日に、映画公開が決まっている。
公式サイトは、こちら → 映画『夜明けのすべて』
帯に、「上白石萌音・松村北斗 W主演」とあったが、主人公の藤沢さんは上白石萌音っぽくなかった。
藤沢美紗は、28歳。
PMS(月経前症候群)の症状が重く、生理2~3日前になると、突如攻撃的になり怒りを爆発させてしまう。
そのせいで終活して入社した会社を辞めることになり、3年前からのんびりした社風の栗田金属で事務をしている。
山添孝俊は、25歳。
前触れもなくある日突然、閉所(レストラン、電車などの乗り物など)や、人とともに行動することで発作を起こすパニック障害となる。
恋人と別れ、やりがいを感じていた会社を退社。入社したばかりの栗田金属で、ただ生活をするためだけに働く毎日。楽しいことは何もない。
そんなふたりの一人称の語りが、交互に繰り返されていく。
ある日、藤沢さんが山添君の病気に気づいたことで、恋人でも友達でもない”同士”のような関係が芽生えていくことになった。
散髪に行くのもしんどく長く伸びた山添君の髪を、藤沢さんが切ったり。
「前も後ろもまっすぐって、これ、どう見てもこけしだよね」
「ああ、そういえば」
怒りを爆発させそうになった藤沢さんを、山添君が外へ連れ出したり。
「藤沢さん、少しだけ一人で怒っておいてもらっていいですか? ぼく、飲み物買ってきますから」
「は? ひとりで怒っておくってなんなのよ」
性別も性格も歳も、病気の悩みも違うふたりが、少しずつそれぞれができることを分かち合っていく。
「駅まで送ります」
山添君が隣に並んだ。
「パニックなのに?」
「ぼくもそう思って家にいようと思ってたんですけど、夜遅いし、万が一何かあったらよくないなと」
「私一人で帰れるよ。それよりも山添君が倒れるほうが厄介だよ」
私はそう言った。
「でも藤沢さんが駅まで行けるかどうか考えていると、息が詰まりそうで、じっとしてるほうが発作は起きやすいから」
自分の身体なのに、思うように動かない。自分の心なのに、思うようにいかない。そんなふたりにも、きっと夜明けは待っている。
砂時計のたぶん上は、藤沢さん。下が、山添君。砂時計は、何度もひっくり返されます。
こんにちは。
松村北斗君、好きです。
カムカムエブリバディに出た時に知った方ですが・・・。
この映画2月に上映されるようですね。
友人の甥御さんの奥さんが閉所恐怖症で、電車に乗れなくてどこにも行かれないと嘆いていました。
東京だから車を持つのも駐車場の問題もあるし、大変そうです。
砂時計はいつでも何度でもひっくり返すことができますね。
同士のような関係、何度もひっくり返される砂時計、持ちつ持たれついい関係です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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