オルヴィエートからバスで1時間。さらにバスに乗り継いだところに、チヴィタ・ディ・バニョレージョはある。ここは、ローマ特派員のえりかさんが運営する「いいやん!イタリア」で見て、わたしがぜひ行きたいとセレクトした。
「地上の浮島」とも「隔絶された秘境」とも表現されるチヴィタ・ディ・バニョレージョは、まるでジブリのアニメーションさながらの「断崖に立つ天空の町」だ。唯一の通行口は、300mの長い橋のみ。
ここは、イタリア語で「La città che muore(死にゆく町)」と呼ばれている。
土壌がもろく崩れやすいトゥーフォ(凝灰岩)でできていて、かつての道を一筋だけ残し、地震や雨、風により崩れ去ってしまったという。人口も、少ないときには10人を切ったらしい。
いつ消え去るかも知れない町。だから「死にゆく町」。
日本では、思っていても決して言葉にしない。町の名前にするなどもってのほかだ。こんな感覚も、イタリアならではなのだろうか。
けれどそのネーミングで人気が出て、観光客が増えているというから、それはそれでいいのかもしれない。
わたしも、その観光客のひとりだ。
オルヴィエートからは、イングランドから来たという夫婦と同じバスに乗った。乗り換え地点で30分ほど歩くしかないとわかり、歩くペースが速い彼らは先に行ったが、小さなチヴィタの町では何度も出会い、会うたびに手を振ったり、チャオと挨拶したり、笑顔を交わしたりした。ほとんど会話を交わさなかったけれど、たがいにこの小さな町を選び、同じ日同じ時間に来て楽しみ、気持ちよく歩いている。それだけで、近しい気持ちになった。
わたしが、人気のロバのミルクのハンドクリームを買い、店の紙袋を下げていると、彼女も同じ袋を下げていて、ふたりで笑った。
こんな時間をくれた、チヴィタ・ディ・バニョレージョ。
消え去ることなく在り続けてほしいと思うのは、観光客の感傷だろうか。
バス停から20分ほど歩くと、姿を現しました。
そこからさらに下って、橋のたもとに到着。ここで€5のチケットをチェックしてもらいます。小さな町を支える大切な収入源になってるんだろうな。
photo by YasuoMaeda.
長い長い坂道を登り切って、ようやく唯一の入口サン・マリア門に辿り着きました。
この向こうに、小さな町があります。
photo by YasuoMaeda.
すぐに、中心となるサン・ドナート教会広場に出ました。
そこからは、ゆっくり街歩き。
ここにもキュートなオート三輪が。
トゥーフォで造られた家が並んでいます。
ロバのミルクで作った石鹸やハンドクリームのお店「アクア・ディ・チヴィタ」です。えりかさんが紹介していました。
お肌のケアに使うクリームなどが、並んでいます。シンプルなデザインが素敵。そして、いい匂い。ロバのミルクのハンドクリームを購入しました。
半日ほどの滞在でしたが、楽しい街歩きでした。
さよなら、チヴィタ。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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