久しぶりの川上弘美は、短編集。
裏表紙の紹介文には、こうある。
ぽっかり明るく深々しみる、よるべない恋の十二景。
「恋」の風景なのだが、そして哀しみが根っこにあるのだが、どれも人のぬくもりに包まれている。
「夜の子供」は、数年前に2年暮らしていた竹雄とばったり会って、誘われるままにナイターに行く朝子が描かれている。
私たちは、夕べのちらし寿司を朝の光の中で眺めているような気分で、互いの名を呼びあった。よく味はしみているけれど、ご飯一粒々々のつやはすでに失われている、ゆうべのちらし寿司。
バッターが二塁打を打った。
竹雄が、そっとわたしの手を握った。
「天井台風」は、夫に離縁され、その後年下の恋人に通帳を持ち逃げされた〈私〉。夫が言った「別れてくれ」の「くれ」が気になると友人のミヤコさんに話す。
「別れてくれ」とは、つまりこちらの好意を暗黙のうちに期待し、かつ有無を言わせぬ自分の力を誇示し、しかも長の年月共に過ごした連帯意識を確認するところの、複数怪奇な意味あいを含む言葉遣いだったのである。
「ようするに、たんに甘えてたわけだ、あの男は」
基本的には「恋」が描かれているが、同じ男を好きになって死んだ女に憑りつかれたり(「どうにもこうにも」)、木の洞に棲み翼や牙が生えてくる恋人の話(「運命の恋人」)もあった。
「冬一日」は、今でいうダブル不倫の二人。
「あのさ、俺さ、百五十年生きることにした」突然トキタさんが言った。
「百五十年?」
「そのくらい生きてればさ、あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうしさ」
「トキタさんたら」
こんな睦言も、もしかしたら叶う日が来るのかも、とつい思ってしまうふわふわとした曖昧さがさらさらと流れていくような小説集だった。
ブックオフのクーポン&ポイントで無料でゲットした古い文庫本です。月に1回100円分のクーポンが使えるので、110円の文庫をゲットします。10円は、ポイントで。ポイ活のひとつです。
味噌づくり真っ最中です!
やっと浸していた豆を全部圧力鍋で煮終わり、買い物に行ってきてから混ぜて桶に入れる算段です。
川上弘美さんの文章は大好きです。
先生の鞄は特にね!
>私たちは、夕べのちらし寿司を朝の光の中で眺めているような気分で、互いの名を呼びあった。
どうすればこんな表現ができるんだろうな~って感心します。
つやを失ったご飯粒、でも二人の関係はまだ続くのか!
私も読んでみたくなりました。
ブックオフのクーポンはいつも失効しています。(反省)
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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