先日の俳句の講演会で、講師の長谷川櫂氏の春の水を詠んだ句がとても素敵で、「春の水」という季語の鮮度のようなものを受けとった気がした。
春の水とは濡れてゐるみづのこと 長谷川櫂
「春の水」は、春の地理の季語で、傍題に「春水」「水の春」などがある。
春は、降雨や雪解などで、渓谷・河川・湖沼などの水嵩が増す。冬涸れのあとだけに、豊かに勢いづき、まぶしさを感じさせる。「水の春」は水の美しい春をたたえていう。淡水のことで、主に景色をいう。海水には、使わない。また、飲み水などには使わない。
たしかに、雪のあとは堰の水があふれんばかりに勢いを増して流れていた。
例句は、こちら。
流れたきかたちに流れ春の水 澤本三乗
また、関連する季語に「水温む」がある。
名を言へば生国問はれ水温む 戸垣東人
川や池などの水が陽射しを浴びて暖かくなると、人の心も解放されていくということだろうか。
今週は、ふたたび雪が積もった。
こんなに何度も雪が積もったことは、越してきて24年経つが初めてだ。
降る雪は、「斑雪(はだれゆき)」。まばらに降る雪や雪解けでまだらに残っている雪をいう天文の季語。
船小屋の柱痩せをり斑雪 尾池葉子
この雪が、春の水を生んでゆくのだと、今年何度目かの雪景色を呆然と眺めた。
一昨日の夕刻の雪景色。また積もるつもり?
綺麗だな~とぼんやりしていたら、一瞬、今が何月なのかわからなくなりました。
斑雪どころか、真っ白。堰の流れはたっぷりで、まばらな雪が写っています。
花を咲かせようと芽を膨らませた雪柳にも、雪の花が咲いていました。この雪が溶けて、それを思う存分根から吸い、雪柳も瑞々しい花を咲かせるのでしょう。
それでもやっぱり春の雪はすぐに解けます。翌日きのう、午前11時。八ヶ岳は凍った北風を吹きおろしていました。
斑雪を味わう間もなく解けていく、春の雪。体感している今シーズンです。
講演で、『歳時記』の使い方を教わりました。
例句のなかで、目を留めた句に印をつけておくという方法です。次の年には、色を変えて印すと、自分の感じ方の変化を知ることもできるそうです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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