庭に、赤とんぼが飛んでいる。
ひと月留守にしているあいだに、庭の雑草も頼りなく細くなり、紅葉したり枯れたりしていて、そこに赤とんぼがスーッと飛んできてとまると、静かに秋の深まりを感じる。
「蜻蛉(とんぼ)」は秋の季語で、「赤蜻蛉」は傍題。
傍題はほかに「やんま」「あきつ」「秋茜」「麦藁とんぼ」「塩辛とんぼ」「精霊蜻蛉」などがある。「とんぼう」もそのひとつ。
「とんぼうや」で5音になるので、俳句特有の読み方なのだろう。芭蕉も「蜻蛉や」を上五に置いて詠んでいる。
蜻蛉やとりつきかねし草の上 芭蕉
突き出た枝などには迷いなくとまるとんぼだが、そうはいかないときもあるということか。
赤とんぼ夕暮れはまだ先のこと 星野高士
『俳句歳時記・秋』に載っていた例句のなかで、とても惹かれた句。ノスタルジー溢れる雰囲気と自然な言葉づかいが好きだった。
ちなみに、夏の季語にも「蜻蛉生る(とんぼうまる)」などがある。
尾を上げてふるへてとんぼ生まれけり 落合水尾
糸のように細く弱々しく飛ぶ「糸蜻蛉」、川辺に生息する黒い翅を持つオハグロトンボなどの「川蜻蛉」なども夏の季語だ。
しなやかなものにつかまり糸とんぼ 吉原一暁
ここ明野に越してきて、夏にもとんぼがたくさん飛んでいるのだと身近に感じるようになった。それでもやはり、とんぼに秋を感じるのは、童謡「赤とんぼ」の淋しげなイメージが身体の芯の部分にあるからなのだろうか。
今たくさん飛んでいるのは、赤とんぼの代表、アキアカネだと思います。
この子は、アキアカネのメスかな。
今庭に咲いているのは、コスモス。もう終わりかな。
秋ざくら倉庫とともに運河古る 赤塚五行
そういえば、数年前に行った小樽でコスモスが咲いていたな~と思い出しました。
黄色いこの花は、たぶんヤクシソウ。
枝が箒に使われていたという、コウヤボウキ。
ツルウメモドキは、いくつか橙色の実を見せています。
風が来て蔓梅擬の朱をこぼす 頼田幸子
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。