『やわらかなレタス』は、2010年に「週刊文春」で連載されたものをまとめた江國香織のエッセイ集。帯は、語る。
食べものをめぐる
言葉と、
小説、旅、
そして日々の
よしなごと。
冒頭の「あたたかいジュース」は、『ムーミン谷の冬』にムーミンたちが元気を出すために飲むもので、それがどんなものだかはわからない。
けれど、身も心もかじかんで帰宅したとき、著者は思う。
何はともあれ、まずあたたかいジュースだわ
そして図らずも、あたたかいジュースに巡り会うこととなった。
「節分のこと」では、豆まきから派生した疑問が投げかけられている。
自分の年の数なんて、到底無理だ。二十歳を過ぎたころから毎年、そう思ってきた。でも、なのだ。でも、去年と今年の年齢差はというのは例外なく一歳であり、大豆たった一粒だ。去年食べられたのに、たった一粒のせいで今年はもう食べきれない、などということがあるだろうか。
「エイヤッ」は、義母がメールや手紙にそのままの片仮名でかくことが多いので、可笑しくなった。すればできることなのに、エイヤッと思わないとできないこと。たしかにある。
やらなきゃ、やらなきゃ、と思っていると、エイヤッはなかなかやって来ない。でも、いざべつなことをしようとすると、エイヤッ、はちゃっかりやって来るのだ。
エイヤッを呼び寄せるために、著者は手間のかかる牛すじ肉を煮込んだりする。
目玉焼きを偏愛し、テフロン加工のフライパンには愛憎相半ば。ハイジが食べていた黒パンを好み、朝食は常に果物のみ。嬉々としてめかぶを湯通しし、列車旅では釜揚げしらすをスプーンで掬って頬張る。
これだけピックアップすると、破天荒なエッセイ集のように聞こえるかもしれないが、共感する部分の方が大きかった。
装画は、福田利之。繊細なタッチが、本の内容とマッチしています。
本棚で眠っていた、一度読んだエッセイ集でした。
「方向音痴のこと、あるいは打ち合わせの顛末」で、3年前に旅したアレンテージョを舞台にした小説があることを知りました。
『チーズと豆と塩と』さっそく図書館で借りてきました。
4人の作家がヨーロッパを旅して、それぞれの舞台で食に関する小説をかくという試みで作られた小説集です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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