夫が在宅勤務するようになって、ひと月以上が経つ。
三度三度、毎度きちんと作るわけではないが、料理する頻度は倍くらいにはなっている。
筑前煮を煮たのも、すでに二度目。
そのうち、マンネリに悩むようになるのだろう。
さて、その筑前煮。
レシピは土井勝のもので、最近はわたしなりにアレンジも加えている。
たとえば、油で炒めず水煮から始めたり、味を薄めにしたり。若い頃に覚えたりょうりも、歳を重ね身体のことを考えてのレシピに変わっている。
そのなかでも、忠実に守っているのが、こんにゃくの下ごしらえだ。
まず塩で揉み、それから尖った細い箸で全体を刺し、味が沁みやすいようにする。そして、ちぎる。
まだ料理を覚えたての高校生の頃、この「こんにゃくをちぎる」という知恵に驚いたことは今も記憶に残っている。
こんにゃくを包丁で切らずにちぎることで、断面が複雑になり、表面積が増える。ゆえに、味の沁みがよくなり美味しく煮上がるというものだ。
料理とは、なんと深いのだろう。
そして、なんと論理的なのだろう。
まさに、目から鱗が落ちたのだった。
理にかなったこと、驚いたことは、記憶に残りやすい。だから今でもわたしは、こんにゃくをちぎるのである。
筑前煮です。
宗谷ガレイの干物との夕食。
ウドの酢味噌和えも添えて。
取材した「眞原の桜並木」で売っていた地もとのウドです。
煮物は、しばらく食べられるのがまたいいですよね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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