日曜日。ここ北杜市からは車で2時間ほど、東京に隣接した小菅村へ行ってきた。95%が森林で、人口約740人という小さな村だ。
わたしの取材に夫をつきあわせる形だったが、彼は彼で、道端の石仏をカメラに収めるのを楽しみとしていた。
彼が石仏を撮っている、待ち時間でのことだ。
車を停めた脇は、傾斜のあるコンクリートの壁が苔生している。見たことのない花が咲いていて、それをじっと見ていたら、ゆっくりと落ち葉が苔の壁を滑り落ちてきた。
不思議な気持ちになったのは、まるで時間の回転を緩めたようなスローモーションだったからだ。
落ち葉は覚悟を決め重力に従いながらも、苔にいちいち止められてゆっくりとしか落ちていけない。
その様にもどかしいような気持ちになりつつも、車のフロントガラスを流れる雨粒のような速さがもしかするとわたしの日常で、不意に、こんなふうにゆったりと時を過ごすこともできるのかも知れないという気持ちになる。
もっと緩やかに。
夏雲の浮かぶ空を見上げると、そんな声が降ってきた。
最初は見たことのないこの花に注目していました。イワタバコという花だそうです。
そこらじゅうに咲いていたんです。
眠り姫のような姿も。
すると、この傾斜をゆっくりと転がり落ちる葉が。
きみたちは、途中で止まってそこにいるんだね。
☆『地球の歩き方』北杜・山梨特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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