手話教室から帰ると、大きな白菜が3つ、玄関のドアの前に並んでいた。プップとクラクションが鳴ったので振り返ると農家さんが「食べて~」と手を振っていた。
これはもう、鍋でしょう。
帰省中の夫に写真を送ると、寄せ鍋にしようとのこと。
暖冬ともいわれているが、夜は冷え込む。鍋日和だ。
「白菜」は、冬の植物の季語。
白菜の山に身を入れ目で数ふ 中村汀女
収穫したばかりの白菜を数えているのだろうか。いただいた白菜も、軽トラに山と積まれていた。
白菜を洗う双手は櫂の冷え 大木あまり
ちょうど鍋の白菜を切って洗い、食材を整え終えてから風呂に入ったのだが、いつになく手が冷えきっていた。湯船に浸けるとしびれがきて、そこから氷が溶け出すような感覚を味わう。例句は、たぶん漬物にする白菜を丸のまま外の水道で洗っていたのではないかと想像した。
「寄せ鍋」は、冬の生活の季語。
舌焼きてなほ寄せ鍋に執しけり 水原秋桜子
執しけり(しゅうしけり)は、なおもこだわり鍋をつつく滑稽さを詠んでいるのだろうか。
寄せ鍋の大げさに開く貝の口 福神規子
貝がぱかっと開くさまを「大げさに」という人の勝手な視点で捉えていておもしろい。
「寄せ鍋」の句には、食べる人、あるいは自分を詠んだ句が多かったが、鍋の中身を詠んだ句、土鍋の重さを詠んだ句など、視点が様々でハッとさせられた。
それにしても、白菜たっぷりの寄せ鍋、いつにも増して美味だった。
立派な白菜でした。まだ土がついています。
きれい!
寄せ鍋の夕餉。鶏もも肉、鶏団子、牡蠣、鱈、竹輪、餅巾着と豪華版でした。
七味と粉山椒を、たっぷりかけて。
神戸へ帰省していた夫が、松本で野沢菜山葵を買ってきてくれました。
ぴりりと穏やかな味わいでした。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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