NHKのニュースで特集を組んでいた有吉佐和子の『青い壺』。
1977年、47年前に出版されたこの本が、文庫で再出版され人気を集めているという。
空のような青をした寸胴型のシンプルな砧青磁の花器。その”青い壺”周辺で起こる人間模様を描いた13話の短編集だ。
第一話では、40代の青磁専門の陶芸家、省造が”青い壺”を焼き上げる。会心の作に焼き上がった。しかし、道具屋は耳を疑うような言葉を口にした。
「この壺な、牧田さん、古色つけといてんか」
骨董品に見せかけるための細工をと、持ちかけられたのだった。
第二話。夫が50年近く務めた会社を引退した。千枝は、夫が毎日家にいる生活に参ってしまっていた。
「私、しみじみ原さんに感謝したくなっちゃったのよ、お父さん。だって六十五で会社お払い箱になってたら、今日で三年もお父さんは家に居っぱなしになるじゃないの」
副社長の原に、お礼をとデパートの高級品売り場で見つけたのが”青い壺”だった。
第四話。原の家では、妻、芳江が”青い壺”に白い花を生けていた。そこに、娘の雅子が孫と来たが、遺産相続の話ばかりする。芳江は、その夜泣きながら夫に話すのだった。
「できれば一日でも私があなたより先に死んでほしいんだって、はっきり言いましたよ、雅子が。税率からいって、その方がトクなんですって」
第五話。”青い壺”は、独り暮らしの千代子のもとにあった。視力を失った母をアパートに呼び、共に暮らすことにした。兄も兄嫁も散々母に世話になっていながら、千代子に押しつけたかたちだ。
千代子の母の医者へ、死を目前にした老女へ、看取った嫁へ”青い壺”は、さらに旅していく。そして、盗まれ、市で売られて買われ、遥かスペインへと渡り、目利きの鑑定士のもとへ。
美しいものは、望もうと望むまいと、ひとの真実を露わにする。
解説の平松洋子がかいていた。
”青い壺”は、ただそこに在るというだけで、人の心に左右する何かを持っていたのかもしれない。
50年ほど前にかかれた小説集だが、古くささはまったく感じられなかった。
ときどき戦争の話などで、ああ戦後を経験した人たちなんだ、50年前にかかれた小説なんだと実感し、それがまた新鮮だった。

平松洋子の解説が、秀逸でした。
青磁は、いわば隙がない色彩だ。やわらかだけれど、どこか張りつめた緊張を宿している。肌合いにただよう一種のきびしさは、あるときはひとのこころの弱さを問い、あるときは慰めを投げかける。しかし、新のうつくしさを最終的に受けとめるのは、ひとのこころのぬくもりなのだと有吉佐和子は穏やかに包み込んでいる。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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