東京の母のところへ行き、実家近くの本屋で衝動買いした文庫本。帰りの電車で読み終えてしまった。
24の短編小説を収めた小説集で、連作ではないが、前の短編に登場した脇役が、次の主人公になっていたりと連作短編集の要素も楽しめる。
帯には『本日は、お日柄もよく』の著者が描く、とあり、明るく前向きな気持ちになれる小説が並べられていた。
一話14~5ページで、何かのあいまに一話だけ読めるところも、読みやすい。
特に好きだったのは「幸せの青くもない鳥」で、失恋したばかりの20代のOLの語りだ。そのまえに彼女の恋に嫉妬した先輩女子を描いた「甘い生活」があり、そのまえには先輩女子の友人が贔屓にしているキッチンカーの夫婦を描いた「日なたを歩こう」がある。
失恋した衣里は、「青い鳥を逃がした」と父親にメールした。(20代で実家暮らしで、こんなメールのやりとりができる父娘がいるのかと驚いた)
そりゃ違う。その鳥は青くもない鳥だったんだ。
予期せぬ瞬間、予想もしない方向から飛んでくるのが、衣里の青い鳥だよ、きっと。
こんなメールを娘に打てる父親がいるのかとも再び思ったが、彼は作家なのである。そんな彼らの家に、”青くもない鳥”がやって来た。そのオカメインコは、「オナマエ、トコチャン」というのだった。
「青くもない鳥」の次には、トコチャンの飼い主母娘の物語で表題作の「独立記念日」が置かれている。
シングルマザーという生き方を選んだ百合子は、5歳になる娘の真子とふたり暮らし。派遣のテレフォンオペレーターの仕事と、無認可の託児所を往復する毎日。
ああ、自由になりたいなあ。
娘を託児所へ送りながら、満員電車に揺られながら、お客様の苦情に言い訳しながら、コンビニのおにぎりを囓りながら、そう思う。
友人たちは、不倫の末の百合子の決断に離れていった。好きだった小説を読む暇もない。そんなとき、オカメインコのトコをもらったのだが、それも逃がしてしまい、真子は精神的に不安定になり、手がつけられない。泣きたいのは百合子のほうだった。
結婚、恋愛、家族、友達といっても、千差万別だ。幸せになりたいのはみんな同じなのに、なぜだか上手くいかない。別れもある。突然の死もやって来る。病気や事故もある。心がすれ違うこともある。
今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る。
温かな目線で、一話ごとに何かから”独立”していく女性たちが描かれていた。

表紙絵は、フィンセント・ファン・ゴッホの『花咲くアーモンドの木の枝』。アート小説を数多く手掛けるもとキュレーターの著者らしい表紙です。
これまで読んできた原田マハ関連の読書感想などは、こちら。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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