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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『ブンナよ、木からおりてこい』

夫の実家から持ち帰った、水上勉の『ブンナよ、木からおりてこい』は、十代の頃友人に勧められて読んだ蛙が主人公のファンタジーで、わたしの読書体験の原点でもある。

再読し終えてから、表紙に〈長編童話〉とあることに気づいた。

童話と小説の括りがどの辺りなのかよくわからないが、子供が読んでも大人が読んでも楽しめる物語だと思った。

 

ブンナは、若いトノサマガエル。周囲には、土がえるや沼がえるしかおらず、背が青く黒い斑点の美しい、跳躍が得意なブンナは、みなに一目置かれている。

子供の頃は、まわりの蛙たちと違う自分の風貌にコンプレックスを持っていたが、成長するにつれ、自分が優れた「トノサマ」と呼ばれるにふさわしい存在だと思うようになる。

しかしブンナは、それを鼻にかけるでもなく(ちょっとは得意になっていたが)みなを助けるために木に登り、外敵の鳶が来るのを知らせ、有難がられたりしていた。

 

ある日ブンナは、10mある椎の木に登ってみたくなる。

途中の木の股まで登ると、遠くの風景が目に飛びこんできた。都会へ続く白い一本の道。そこを自動車が走っていた。

広い世界に憧れたブンナは、とうとうてっぺんまで登っていく。木のてっぺんには、広場があり土があった。雷に打たれて折れたらしい。

しかしそこは、鳶の餌置き場だったのだ。土のなかに隠れていると、地震のように揺れ、手負いの雀や百舌を置き、鳶が去っていった。ブンナは、思いがけない体験をすることになる。

雀、百舌、鼠、へび、牛蛙。

半死の目に遭わされた彼らの話を聞くことになったのだった。

その間にそれぞれの個性をむきだしにして、後悔したり、懺悔したり、自分だけ生きようとブンナを身代わりにしようとしたり、闘争したり、また、そのことを反省したり、そして、生きる希望を見いだそうとするかと思えば、生きることの一切をあきらめたり、ときには生死を忘れて母親のじまんをしたりしました。

ブンナは、生きるということを深く深く考えることとなる。

動物世界の弱肉強食の話とは言い切れない、人間社会に通じるものがこの物語にはあるように思えた。

40年以上前に読み、それ以来なので、童話という印象がありませんでした。

挿画は、著者の水上勉。カエル好きには心惹かれる素敵な絵。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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