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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『家日和』

『コロナと潜水服』がおもしろかったので、ちょうど10年前に読んだこの短編集を再読した。奥田英朗の真骨頂、ホームコメディ三部作の1作目だ。

短編6作は、どれも家族に起こるさまざまな出来事を、温かな目線でおもしろおかしく描いている。

 

「サニーデイ」

紀子、42歳。中学生の娘と息子がいるが、母親のことはうるさがるだけで興味もない。夫も同じだ。むかしピクニックに使ったアウトドアテーブルを処分しようと思い立ち、そこからぐいぐいネットオークションにハマっていく。

売っちゃうか、無断で――。紀子の中で黒い気持ちが湧き起こった。清志に聞けば拒否するに決まっている。「思い出が詰まってるんだぜ」とか勝手なことを言い出すのだ。

「ここが青山」

36歳の裕輔は、突然会社が倒産し無職となる。それを聞いた妻が、4年前に出産で退職した会社に復職を決めた。夫婦の仕事をすべてチェンジ。ふたりは、すんなりとその役割に馴染んだ。裕輔は家で家族のために家事をするのが楽しく、妻は仕事にやりがいを感じている。快適で幸せだ。だが、世間はことあるごとに、同情の目を向けてくるのだった。

 

「家においでよ」

正春、38歳。妻が出て行った。理由はよくわからない。ぼんやりと受け入れ、空になったマンションには家具が必要だと動き始めた。

「男が自分の部屋を持てる時期って、金のない独身生活時代までじゃないか。でもな、ほんとうに欲しいのは三十を過ぎてからなんだよな。CDやDVDならいくらでも買える。オーディオセットも高いけどなんとかなる。けれどそのときは自分の部屋がない……」

「まったくだ。おれなんかCDを買っても聴けるのは車の中だけだぜ」

オーディオセットと古いレコードを置いた居心地のいい正春の部屋に、同僚たちが夜な夜な飲みに来るようになるのだが。

 

「グレープフルーツ・モンスター」

弘子、39歳、専業主婦。子供ふたりが小学校に上がってからパソコンで宛名書きの内職をしているが、29歳のサーファー風の男が担当者に替わった途端、男の化身のモンスターの夢をみるようになる。

自分はずっと家にいて、テリトリーの中にいて、何かが来るのを待っている。不満はない。そうやって三十代を過ごしたし、これからも同じだ。生きがい探しも、自分探しも、生涯縁はない。とくに求めてもいない。それでしあわせだ。

「夫とカーテン」

フリーのイラストレーターの春代、34歳。同い年の夫が突然会社を辞め、カーテン屋をやるという。以前も、リース会社を辞めて出前代行業、アパレル会社を辞め同窓会幹事代行業と、夫には突如冒険をしたくなる時期がやってくるのだった。

 

「妻と玄米御飯」

42歳、作家の康夫(著者本人がモデルっぽい)は、ロハスにハマる妻を受け入れるしかなかった。百回噛んで食べる玄米御飯に、小学5年の双子の息子たちはブーブー文句を言っている。康夫は妻の熱中ぶりに振り回されるうち、ロハスを先導する気どった夫婦をモデルにユーモア小説をかきたくてしょうがなくなる。

 

6編に共通するテーマは、”生きがい”だろうか。

何かにハマったり、夢中になったり。人は、そうしていないと生きていけないものなのかもしれない。

大好きな三部作だっただけあって、売らずにとってありました。『我が家のヒミツ』は、新刊で買ったんだね。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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