今日から、ゴールデンウィークが始まる。
一昨日、あまりに山々が澄んだ顔をしていたので、久しぶりに「ハイジの村クララ館」の展望スポットに立ち寄った。
『地球の歩き方』の5月トップ記事に、パノラマスポットを紹介しようと思ったのである。
春霞の季節。山々も霞んでいることが多くなる。
そんな季節にいて数日に1日といった割合で、空気が澄み、山がくっきりと見える日がある。
どうして起こる現象なのか、気象予報士でも何でもないわたしには、長く暮らしていても理由も思いつかない。特別冷え込んだわけでも、雨上がりというわけでもない。
「お、今日は格別」
ただ、そう感じる。
展望スポットで四方に望む山々を眺めつつ、写真に収めた。
富士山は、まだだいぶ白い。雲が少しも見えない富士山は久しぶりだ。
南アルプス連峰の裾野の緑が、ずいぶんと濃くなっている。新緑とは、もう言えまい。
そして、八ヶ岳連峰。
毎日、リビングの窓から眺めている八ヶ岳をほかの山々と見比べるようにして振り返ったとき、不意に思った。
「あ、笑ってる」
「山笑う」という春の季語を知ったのは、俳句を学び始めるまえだった。
2年前のちょうどこの時期に『地球の歩き方』で「5月山笑う頃、夏を待つ山梨の山々」という記事をかいていた。
暖かな陽の光を浴びて草木は芽吹き、鳥や動物たちは恋の季節に浮き立っている。そんな動植物が棲む春の山は生き生きと笑っているかのようだ。
そんな意味合いの、明るいのどかさを持つ季語だ。
水底の石の揺らめき山笑う 長谷川櫂
言葉というものは不思議だ。
知って2年が経ち、ようやく自分の感覚のなかに「山笑う」という言葉が息づき、根づいていることを認識したのだ。
雪は次第に少なくなっているが、まだ白く化粧した峰を楽しむことができる。それももう、あと少しだと眺めた山々が教えてくれている。
「ハイジの村クララ館」の展望スポットから望む富士山。
富士山は、まだ雪も多く、他の山々よりは笑っている感じはしませんね。
南アルプス連峰は、ほぼ雪解けしていました。
少しだけ雪が残る「アサヨ峰」と「甲斐駒ヶ岳」。
八ヶ岳連峰は、お腹を抱えて笑っています。
言葉というものの不思議を思います。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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