ひと雨降った朝。庭の蕗やライラックの葉の上に、けろじの姿があった。
大きなお腹をした子が、空を見上げるようにしている。何を思っているのか。
日常の何気ない風景だが、しかしわたしはその姿を見て、下ばかり向いていないで「顔を上げなさい」と言われているかのような気がしてハッとした。
こういう小さなきっかけのようなもの、「トリガーポイント」(引き鉄となるもの)は、日常のなかに常に潜んでいる。
お盆休みがスタートした土曜日。わたしは、甲府方面に向かって車を運転していた。普段は考えられないことだが、反対車線は渋滞に近い混みようで、今さらながら暮らしている場所が観光地であることを実感する。みな向日葵を観に来るのだ。不思議な感覚で、すいすいといつもの道を運転していると、前の車の後ろのガラスに映し出された青い空と入道雲が目に入った。
「きれい」
そう思った途端、不意に息子のことを思い出した。東京で暮らす30歳になる息子だ。彼が2歳くらいだっただろうか。ふたりで散歩して見上げた空を、わけもなく思い出したのだ。
トリガーポイントの悪戯である。
日常のなかには、いくつもの引き鉄が隠れているのだ。
もう何年も会っていないけれど、彼は元気にしているだろうか。
こちらに挑むかのような視線を向けているけろじ。
空を見上げているかのような後ろ姿のけろじ。
密集したライラックの葉に姿を隠すようにしているけろじ。
庭では、ようやくテッポウユリが咲き始めました。
ハマナスは、日々鮮やかなピンクの花を咲かせて。
ヘクソカズラは、あちらこちらで可愛らしい花を咲かせています。
とり残した山椒は赤く色づいて。
栗の実は、青く大きく生っています。
知らぬ間に、ミンミンゼミの季節になっていました。
実物。お尻を振って力強くミンミン鳴いていました。
蜩は、かくれんぼしているかのよう。
きみは、そんなところで何を?
☆左手くんがトリガーポイントについて語る記事は → こちら
初めてコメントさせていただきます。
多くは知りませんが、「はりねずみの眠るとき」は、今一番好きなブログです。
豊かさというのは、こういう暮らし、心のありようをいうのではと感じ入りながら
読ませていただいています。
文中のふと空を見上げて心に浮かんだ息子さんのことと、
写真のけろじ君のつぶらな瞳、さびしげな佇まいが重なって、
勝手ながら、コメントしたくなりました。
自分も息子を持つ身ですが、今さらながら分かったことがあります。
人も物事も、向こうから来なければ、こちらから行けということ、時は
雲よりも速く、いつのまにか流れ去るということです。
この素敵なブログを、けろじ君も読んでいるといいですね♪
わた雲さん
うれしいコメント、ありがとうございます♩
「人も物事も、向こうから来なければ、こちらから行けということ、時は雲よりも速く、いつのまにか流れ去るということ」
この言葉、心に沁みました。
わた雲さんも、息子さんがいらっしゃるんですね。
会いに行こうと思います。
けろじが読んでくれていたら、いいな♩
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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