先週、先々週の『みんなの手話』で、手話で絵本を朗読するコーナーがあり、『まっくろネリノ』(偕成社)を、手話と併せて身体全体で表現していた。
手話を話す人は、いつも思うがとても表現豊かで、観ているとひきこまれていく。その表現も相まって、むかし子どもたちによく読んだ絵本『まっくろネリノ』がさらになつかしく感じられた。
鳥の子どもであるネリノはまっくろで、しかし兄さんたちはそれぞれ赤や青や紫や緑など、美しい羽を持っていた。兄さんたちはまっくろな弟を仲間外れにする。だが、美しいがために人間に捕らえられた兄さんたちを、救ったのは夜の闇に紛れることのできる弟、ネリノだった。
というストーリーだ。
それを観てから、車に乗り久しぶりにビートルズを聞いた。
『Blackbird』は、アコースティックなギターのメロディが切ない好きな曲だ。何曲目かに入っていて、何度かリピートしてじっくり聴きながら運転した。
黒い鳥は飛ぶ 黒い鳥は飛ぶ 光のなかを
暗く黒い夜のなかで
そんな歌詞だ。
そんな道々、カラスが見えた。カラスなど、いつも見かけるのだが、『まっくろネリノ』と『Blackbird』と重なっていたせいで、何か特別なものに見えた。その瞬間、少年が持っていた真っ黒い傘が風でひっくり返り、カラスは飛び立っていった。
「黒い鳥」が3つ重なった。なにか意味があるのだろうか。
『Blackbird』の歌詞。
きみの人生でずっと きみは待っていただけだったね
自由になる瞬間を
この歌詞が、メッセージなのだろうか。
しかし、韓国の諺には「カラスが飛び立ち、梨が落ちる」というのがある。
いかにも関係ありそうな2つのことがらのあいだに、必ずしも因果関係があるとは限らないという意味だそうだ。
人間は、意味のない情報から意味あるものを見いだそうとする傾向がある。
わたしの周りで同じ日に飛び立った黒い鳥たちも、たぶんなにも意味を持たないのだろう。
台風の前日の空です。
Blackfrogです。けろじ、ウッドデッキと同じ色になったんだね。えらいね。カラスに食べられないようにね。
『誰も知らない世界のことわざ』(創元社)に載っていました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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