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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

思いがけずニセアカシア

忘れ物をした。東京と神戸に続けて滞在すべく、キャリーバッグに着替えやら何やらを詰め込んで、戸締りをして家を出た。

「ケータイ持った。財布持った。スイカ持った。車中で読む文庫本も持った。戸締りOK。レッツゴー!」

いろいろ確認したにもかかわらず、車を走らせて5分もたたずに気づいた。

「あー、ケータイの充電器、忘れたあ」

車を停められる場所まで走り、キャリーバッグをひっくり返して探したが、やはり見当たらない。夫との待ち合わせ。義母との連絡。引っ越しが近づいた娘たちからもLINEがあるかも知れない。そのうえ、バッテリーが弱ってもいる。

「あずさ、1本見送るしかないか」

特急を1本見送るということは、1時間遅れるということだ。肩を落として、キャリーバッグを閉じ、車のドアを閉めた。

 

そのとき不意に、鼻先に甘い匂いがした。

「ああ、ニセアカシアだ」

前日、夫と「咲いたね」と話したところだった。

見ると、停車した場所の川の向こうに、白い花を咲かせた木々が揺れているのが見えた。それが、川沿いにずっとずっと続いていく。振り返ると、反対側の道の向こうにも無数の白い花を咲かせた木々が揺れている。ものすごい数だ。

房になった白い花が咲かなければ、その木がニセアカシアだと意識することはない。町じゅうにニセアカシアの木があるのだと、この時期にだけわかるのだ。

 

それからしばらくむせ返るような甘い匂いを感じ、さらさらと風に揺れる無数の白い花を見ていた。思いがけずニセアカシアをゆっくりと楽しむことができた。

 

CIMG7131車を停めた場所から見えた風景です。白く見えるのが全部ニセアカシア。

CIMG7136いっぱい咲いてるー。満開なのかな? 八分咲き?

CIMG7138手にとれるような場所にも、咲いていました。

CIMG7143房が大きい。近くで見ると迫力あり。蜂がせっせと蜜を集めていました。

COMMENT

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  1. ユミ より:

    1時間遅れるというあきらめが付いたからこそ、ニセアカシアを楽しむことが出来たんですね。
    でも今の私達って、ほんと携帯無いとダメですね~
    泊りがけで行く時は、充電器は必須アイテムです。
    出かける時も、携帯忘れたら、不安で不安で・・・
    短時間の外出なら仕方ないと諦めますが、長時間の外出はやっぱり取りに帰りますもんね。
    携帯のない時代をしっかり生きていたはずなのに・・・(-_-;)(笑)

    • さえ より:

      ユミさん
      ほんと、ケータイないと生活できなくなっていますね~
      ケータイ依存症なんて言われる時代ですよね。
      たしかに、ケータイのない時代をしっかり生きてきたのにね。
      わたしは、ケータイは、連絡手段と割り切れるんですが、パソコン依存、ちょっとあるかもしれません。
      でも、ニセアカシア、きれいでした。ゆったりとした時間を楽しむことができました♩

  2. 悠里 より:

    今は、山帽子やにせアカシアが旬ですね。韮崎のバイバス沿いや山間部には、にせアカシアの甘い薫りが 噎せるほどに漂っています。私は山帽子の薄いピンクを見掛けたと、興奮気味に話すと友人は、今は何よりもにせアカシアが旬で、特に天ぷらはたまらなぃと、うっとりとさえするのです。花は鳥や蜂の為で人間は愛でるだけで何も食べなくてもーと言っても、彼女は美味しそうから離れません。人それぞれですから、それはそれで仕方ありません。私は忘れ物名人で、何処に出掛けるにも完璧だったためしがありません、諦めています。

    • さえ より:

      悠里さん
      ニセアカシア、いっぱい咲いていますよね~。
      エッセイ教室に向かう山沿いの農道も、ニセアカシアでいっぱいです♩
      天麩羅にして食べられるんですよね。
      食べたことはありませんが、プロポリスが豊富な蜂蜜がとれるんだから、美味しくて栄養ありそうですね。
      忘れ物名人♡お仲間がいてうれしいです。

PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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