スパイって、かっこいいよね。
ごく普通だと思っていた人がじつはスパイで、拳銃片手にアンビリーバボーなアクションを繰り広げ、仲間や巻き込まれた人を救っていく。
そのかっこよさって、やっぱり「ごく普通だと思っていた人」が、自分の能力を隠してるってとこがいいんじゃないかな。驚きが半端じゃないから。
大沢在昌の『俺はエージェント』(小学館)は、東京の下町の居酒屋からスタートする。
主人公村井は、20代後半のフリーター。今日もパチンコに負けたとビールをあおり、スパイ小説のペーパーバックをめくっていた。
「スパイになりたかったんです。あの時代に外国に生きてたら、絶対スパイになってた」
それを聞いているのは、60代の推理小説家大西と、白髪をオールバックにし夕刻から静かに冷酒を飲む老人白川。3人とも「大衆居酒屋ますい」の常連客だ。「ますい」の大将とおかみさんも、和やかに話に加わっていた。
しかし白川にかかってきた1本の電話が、すべてを変える。
「いいお客さんだったのに残念」
そう言って、村井の脇腹に拳銃を押しつけたのは、おかみさんだった。
もとエージェントの白川は、5人の仲間を探し出し、あるミッションのため動き出す。巻き込まれた村井と、仲間のひとりおトミさんの孫娘IQ150のミクも加わって、若者たちとスマホも使えない80歳代の老兵たちがタッグを組む。
「親は『どうしてふつうにできないんだ』ばっかり。人とちがうのが駄目で、とにかく目立なって叱られた。あたしに味方してくれたのはバアちゃんだけで、初めてほめてくれたのもバアちゃんだった。バアちゃんは、あたしにはエージェントの才能があるって」
白川のもと妻で同業だったミッシェルも、現れて。
「この二人は邪魔ね」
右手のさしこまれたバッグが持ちあがった。
「よせ! ミッシェル。彼は我々のキィマンだ」
警察は、敵なのか味方なのか? ロシア大使館は? CIAは? 村井は、念願のスパイになって活躍できるのか!?
驚きが盛りだくさんのエンターテインメント。映像化したら、おもしろいかも。
「能ある鷹は爪を隠す」っていうけど、じつはスパイでしたっていうのはあり得ないにしろ、ひとつくらい「爪」隠してて驚かせたいっていう心理、みんな持ってるんじゃないかな。ない爪を何か探して磨きたくなった。
なぜか外国人風に描かれた村井と白川老人。カバー裏には「007になりたい俺と時代遅れの老兵(エージェント)たちの決死の大作戦!!」とありました。
エージェント【agent】大辞林第三版より
① 当事者に代わって物事を処理したり、意思表示をしたりする者。代理人。代行人。代理店。代理業者。② スポーツ選手の契約交渉や、選手が競技に集中できるような環境づくりを仕事とする者。代理人。③ 諜報活動を行う者。諜報部員。スパイ。秘密情報員。工作員。④ コンピューターのユーザーが連続した操作をしなくても、自律的に情報収集や状況判断を行い、適切な処理動作を実行する機能。また、そのソフト-ウエア。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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