瀬尾まいこの文庫本『私たちの世代は』は、コロナ禍に子供時代を送った少女たちの物語。
視点は、ふたり+α。
🍏マークは、小学3年の冴(さえ)。🌷マークは、同い年の心晴(こはる)。
そして、👜マークは、23歳になった冴&心晴。
物語は第一章から第五章まで、ランダムに3つの視点で進められていく。
ママとふたり暮らしの冴は、公立小に通っている。
友達に「冴ちゃんのお母さん、夜の仕事なんでしょう」と意地悪っぽく言われるが、ママは「仕事は仕事」と胸を張る。ママは親に捨てられて施設で育ったが、愛情豊かで前向きな女性だ。冴が1歳のときにパパが死んでから、ママは冴をこれ以上ないというほど愛して育ててきた。
「愛とか幸せとかって形がないっていうけど、冴が生まれて、おお、愛と幸せの塊が目の前にあるって、愛ってちゃんと見えるんだって思ったんだ」
「本当に?」
「本当。昔は自分の親を捜したいと思うこともあったけど、冴が生まれて一気に何もいらなくなった。冴以外はどうでもいいって思えた。それってすごいよね。冴は幸せの塊なんだ」
教育熱心な家庭で育つ心晴は、私立小に通っている。
コロナ禍になり、お母さんはオンラインの英会話、体操、ヴァイオリンなどを心晴のためにセッティングする。気が向かないままオンラインの習い事を続ける心晴は、学校の机のなかに小さな紙切れを見つけた。心晴は、分散登校で同じ席に座っている誰かとの文通に楽しみを見出すようになっていく。
全員登校がOKになった最初の日の朝、校門のチューリップ花だん前で待ち合わせしよう!
それだけを楽しみに、全員登校を待っていた心晴だったが、父親が糖尿病の持病を持っているため、登校しないようにお母さんに言われる。
「心晴が学校に行って感染症にかかってそれがお父さんにうつって死んだら、心晴どうするの?」
この人はなんていう脅しを使っているのだろう。けれど、小学四年生の私にとって「死ぬ」という言葉はとても怖くて重かった。
その日から不登校になった心晴と、中学時代「お水の娘」といじめを受けた冴は、就職試験の会場で出会う。
人と関わることが難しかった子供時代を過ごし「マスク世代」と呼ばれる、冴と心晴だが、「○○世代」などと括ることのできない冴だけの、心晴だけの今が、そこにあった。
個人的に好きだったのは、冴の同級生、蒼葉。
育児放棄の状態にあった彼に、給食が始まるまで、ママは冴とパンを届け続ける。蒼葉は高校進学はあきらめ、バーで働き自立して、とても素敵な大人になっていく。
しかし彼は、冴ちゃんを好きにならないようにと「岸間さん」と名字で呼び始めるのだった。
どんな時代に生きていても、ひとりひとり、違うんだ。違っていいんだと思える物語。

コロナ禍の話は、もういいかなと思っていましたが、コロナ関係なくおもしろい小説でした。
帯裏には、瀬尾まいこ”やさしさの三部作”とあり、この小説と『夜明けのすべて』、『そして、バトンは渡された』が並べられていました。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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