少し前のことになるが、松本空港を利用した際、少しだけ足を伸ばして松本城へ行った。
息をのむほどに美しく、堂々とした城だった。
現存する五重六階の天守のなかでも日本最古の城で、国宝だそうだ。
城内に入り、階段を上る。6階まであるわけだが、段々に急になっていく。
「こりゃ、階段っていうより梯子だな」
夫が振り向いて、気をつけるように促した。
筋肉痛になりながら(笑)登り切った天守閣てっぺんから見下ろした風景は、爽快だった。
その6階の天守には、「二十六夜神」が祀られていた。
元和3年(1617)松本に入封した戸田氏が祀ったとされています。月齢26日の月を拝む信仰で、戸田氏は毎月3石3斗3升3合3勺(約500キログラム)の米を炊いて供えたといわれています。関東地方に盛んだった月待信仰が持ちこまれたものと解されています。
その後、本丸御殿が火事にあったときに天守が焼けなかったのは、二十六夜神のおかげだと語り伝がれているそうだ。
初めて聞く言葉だったので、「月待信仰」を調べてみた。
特定の月齢の月を観賞したり拝んだりする民間信仰で、月の満ち欠けへの恐れから生まれたという説が有力らしい。人間にははかりしれない力を月の満ち欠けに感じたのだろう。
十三夜、十五夜、十六夜などのなかでも二十三夜がもっとも多く、日本全国に「二十三夜塔」が残っているという。
二十六夜というわけではなかったが、ゆっくりと手を合わせてから、急な階段を下り始めた。
松本城。
美しいお城ですね。
入口には、松本市のマスコットキャラクター、アルプちゃんが。
登って登ってまた登って、見下ろした鯱。
お堀を悠々とゆく白鳥と、それを撮影する人。
天守の梁に祀られた、二十六夜神です。
帰りにお堀の周りを歩いて見た松本城が、また美しかった。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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