2月に、所用があり実家へ行った際のこと。
91歳の父は検査入院中で、そちらには見舞いに立ち寄り、実家では85歳の母とふたりゆっくりしゃべった。
「これ、持って行ってくれる?」
そのときに母が差し出したのは、わたしのへその緒と母子手帳だった。
「いろいろ、片づけているのよ」
持って帰り、どうしたらいいのかとも思ったが、そう言われると断るわけにもいかない。
「たいした記録もしていないけど」
恥ずかしそうに言い添えた。翌年、弟が生まれたのだから、さぞ忙しかったのだろうと今のわたしにはわかる。
「それと、これも」
「風呂敷?」
「きれいな色だったから、買っておいたの」
深い青。どこかで見たことがあるような。
「あ、これ、平山郁夫じゃない」
「画家さんの名前?」
「そうそう。北杜市に美術館があるんだ」
2度に渡り取材したお気に入りの美術館だ。なかでも彼が描く深い青は、平山ブルーと呼ばれるほどに独特で魅力的。青が好きなわたしのなかでも心魅かれる青である。
「ありがとう。ほんとに、きれいな色だね」
母もこの青に魅かれたのだと思うと、血のつながりの不思議を思わずにはいられない。
その日は、いつになくよくしゃべる母とのおしゃべりを楽しんだのだった。
いちめんの深い青のなかに描かれた青い魚の群れ。
鰯の群れでしょうか。
刻印を見るまえから、平山ブルーだとわかりました。
こんばんは。
お母様とのひと時、こんな時間ってあるようでないですよね。
夫が一緒だったり、きょうだいがきていたりで・・・・。
平山郁夫さんの美術館、行ってみたいな~と思っています。
お母様との好みやっぱりDNAですね。
私も彼の絵が好きです、母もまた大ファンです。
秋田で開催される院展に二人で出かけるのが春の行事の一つでした。
4月の中旬の小さな神社のお祭りにも一緒に出掛けていたのですが、今年はコロナの影響で中止となりました。
とても残念です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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