コロナ禍で旅行に行けず、その流れで失効になりかけたマイレージで、蟹を取り寄せた。
三杯酢で食べたりもしながら、『鍋の天下一品』の表紙にある「カニちり鍋」にしようということになる。
「カニちり鍋」は、昆布だしに味つけは、酒、醤油、塩の薄味で、蟹を殻つきのまま入れ、具は白菜と春雨だけという、潔いほどにシンプルな鍋だ。柚子醤油のタレに、薬味は葱とすりおろし生姜。
普段は食べることもないほんまもんの蟹だが、いや、やはり旨い。蟹の煮汁を吸った白菜と春雨もなかなかに相性がよかった。
「蟹と柚子って、合うよね」
食べながらそういう話になったのは、白菜大量消費が迫られたたときによく作る「白菜と蟹缶の柚子風味」と、食材もさっぱり醤油の味つけも似ていたからだ。
レシピは「小林カツ代のひっぱりだこの簡単おかず」から作るようになり、冬のあいだに3度は食べる。何しろ簡単で美味しい。薄口醤油と酒と材料を鍋に入れ、煮込まずさっと煮15分。短時間でできるのもいい。柚子は小さいものなら1個分たっぷり入れるのが我が家流だ。
ほんまもんの蟹を食べつつ、いつもの我が家の味を思い出すとは、やはり庶民である。
「このお鍋、お正月にも、食べたいねえ」
「失効になるマイレージは、もうないよ」
いやはや、来年の話をしても、すっかり鬼が笑わない季節となってしまった。
ズワイ蟹。たっぷり1杯分です。
まずは、三杯酢で。
蟹と白菜と春雨オンリーのシンプル鍋です。
タレは醤油と柚子の搾り汁で、薬味に葱と生姜のすりおろし。
翌朝は、蟹たま雑炊にしました。うーん、潮の香り。
☆シミルボンサイトで、〈『鍋の天下一品』で、鍋を楽しむ〉を連載中。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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