この本は、効き目あらたかな即効薬だ。
疲れた心に、ビタミンカラーな言葉のシャワーが沁み渡る。
心温まる物語〈ギフト〉を集めた短編集。
「この風がやんだら」
ついてないことばかりが起こるとイラつく日々。彼と気持ちがすれ違い、〈私〉は、ひとり旅に出る。
島に近づくにつれ、雲のあいだから光が射すのが見えた。
向かい風で髪が顔にふりかかる。私はサングラスをおでこの上に持ち上げた。
視界が急に明るくなる。空は晴れていた。
暗いと思ってみつめていた海の明るさに、心がふいに軽くなるのを感じた。
〈私〉は気づく。何もかもが、自分次第で変わるのだと。
「十二月のカレンダー」
栄転し、明日からは新しい職場の課長になる。だが〈私〉は、ちょっと浮かない気分。辞令が出たときに部長がつぶやいた。
まったく、君は十二月のカレンダーみたいな人だからな。
厳しいけれど尊敬していた部長。それなのに、部長は「さっさと終わってくれ、新しいカレンダーをかけたいんだから」っていう気持ちなのだろうか。
「ささやかな光」
父の猛反対を押し切って家を飛び出し、パティシエになった〈私〉のクリスマスは忙しい。
一人前にケーキを作れるようになるまで、帰らない。そう決めていたけど、ほんとうはさびしかった。
初めてクリスマスケーキを任された年、〈私〉に起こったサプライズとは。
5分で読める20編のショートショートと、1編の短編が収められている。
心がどうにもしんどいときに開いてみては、いかが?
ショートショートの合間に、表紙のようなやわらかな色彩の抽象的な水彩画が置かれています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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