寄り道。道草。遠回り。
そのなかに秘密の時間が隠れていそうで、心魅かれる言葉である。だが。
近道。裏道。抜け道。
こちらにも、魅かれる。どちらも道をそれることに変わりはなく、やはり密やかな何かを感じる。
何もなくてもいいのだけれど、何かがあるとちょっとうれしい。
町内に花桃寺があり、ふと気になって通ってみると満開だった。
3年前に見つけた「長龍寺」だ。勝手に「花桃寺」と呼んでいる。
見つけた3年前、一本の木に色の違う花をつける花桃の咲き方を「源平咲き」というのだと知った。花桃は、花を観賞するために品種改良された桃の木だそうだ。
雛祭りに飾られるピンクの八重咲きを「矢口」、純白の花だけを咲かせる「関白」、紅白ピンク色々咲く「源平」と呼び分けられているらしい。
普段通らない道なので、1年前も2年前も見過ごしてしまった。
我が家は坂の途中にあって、町のメインストリート(といっても路線バスは2時間に1本ほどののどかな道だが)を通り、くねくねと急な坂道を上ることが多い。
花桃寺は、メインストリートと並行して我が家よりも少し上を通る道に位置している。ほんの少しだが遠回りになる。時間にしておよそ2分程度か。
遠回り。
この言葉に心魅かれることすら忘れていた自分に、気づく。
季節はこうして、人間に微かだけれど大切にしていた何かを、不意に手渡してくれるのだ。
「長龍寺」です。どれも枝垂れですね。
右にも。
左にも、花桃の木が立ち並ぶ参道。
「山華桃」とかかれています。
「源平」です。不思議で、美しい。
「関白」ですね。真っ白もきれい。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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