先週、玉葱をいただいた。葱のように緑の葉が長くついた葉玉葱だ。
毎日料理しては食べていたのだが、東京、神戸へと行くことになり、新聞紙に包んで玄関に置いて出かけた。
帰ってくると、先についた蕾が、つんと上に向かって伸びていた。
それを見て、不意に悲しくなった。
植物の逆境にも負けない真摯な姿に、根拠もなく誰かに責められているかのような気持ちになり、言い訳したくなったのだ。
「これでもけっこう、必死に生きてるんだよ」
植物は、確かにすごい。言い訳もせず、あきらめもせず、与えられた環境で必死に生きていこうとする。強い。
だけど、とも思う。わたしも含め、周りの人たちを見まわして考える。
「みんな、まじめに生きてる。必死にやってるんだ」って。
いい大人になったって、こうして突然泣きたくなったり、弱音を吐いたりしてしまう。玉葱の蕾が伸びているのを見たとき、傘をパッと開いた音、時計の秒針が時を刻んだ瞬間。わたしは、ぐらぐらと揺れる。
まったくもう。いつになったらちゃんとした大人になれるのやら。
「葉玉葱食べて、がんばろ」
食べて眠って、明日も生きていくしかないもんね。
いただいた葉玉葱。10本以上ありました。
畑から掘りたてです。細おもてな玉葱さん。
白く白く、やわらかいです。
いつもの茹で卵ディップに、丸々1個刻んで入れました。
ジャーマンポテトには、普通の玉葱として活躍してくれます。
緑の部分は、茹でて鶏ささみとぬたにしました。
玄関の米袋の脇で伸びていた葉玉葱の芽です。がんばってるなあ。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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