あ、今、数字の近くにいる。
そう感じる瞬間が、周期的にやってくる。仕事が広告会社の経理なので、月ごとのルーティンがあり、その周期は自然とも言える。
何十件もの請求書の確認。帳簿と請求書を照らし合わせながらの振り込み。銀行の合併が続いてその後は、1件1件振込先の口座番号も確認していく。
「今回も、お変わりなく」
馴染んだ7桁の番号に、声をかけていく。
「おや、いつの間に移動なさって」
新しい顔ぶれも、毎月のように現れる。
「ぞろ目さん、ありがとう」
判りやすい金額には、お礼を言う。
「ちょうどぴったり。すばらしい!」
消費税や源泉税が、請求書の一桁まで0以外の数字を持ってくるようになって久しい。そんななかに000で終わる金額を見つけるとうれしくなる。
毎月のルーティンも22年目を迎えれば、そんなふうに数字と会話することで仕事を効率的に進められるようになっている。特に馴染みの口座番号は、色でもない、形でもない、パッと目にした雰囲気で捉えられる。いや。何桁かの塊となった数字たちには、色もあり、形もあり、表情さえもあるからこそ、その雰囲気で捉えられるのかも知れない。それは、人を顔や雰囲気の違いで識別するのと、似ているような気がする。この不思議な感覚は、体験した人にしか判らない種類のものなのだろうか。
とは言え数字は、人に見せていない顔も持っているように思う。だから常に疑い何度も確認することが必要になる。できれば何人かの目で。いくつかの方法で。
大量の数字に溺れる日々が一段落すると、近くにいた数字が離れていく。ホッとする瞬間でもある。しかし、とも思う。永遠に数字に溺れる時間が続いたら、もしかしたら7桁の数字くらい、顔を見るように識別できるようになるんじゃないかと。そんなふうにもっともっと、どっぷりつかるように数字の近くで仕事をしている人も、いっぱいいるんだろうな。
みなさま、お仕事お疲れ様です。
東京本社近くの『大手町川端緑道』を、歩きました。
冷え切った空気のなか、鮮やかな緑の葉も見られました。
こんなふうに立札があちらこちらに。ツワブキ、冬に咲くんだ。
お堀沿いの、気持ちのいい遊歩道です。
フッキソウって、初めて聞きました。
今咲いているのは、山茶花くらいかな。
寄せ植えっぽいコーナーには、山茶花や緑の葉もいろいろ。
クリスマスツリーのような背の高い木も、空に向かって伸びていました。
「とは言え数字は人に見せていない顔も持っているように思える。」
とはなかなか面白いことをおっしゃる。
「暮らしを数字でつかみましょう!」
何十年前に参加した婦人活動(今では女性活動というのでしょうね)の中で出会った言葉。
「生活を科学しましょう」の兵庫県が全国に先駆けて設けた「生活科学センター」のキャッチフレーズと共に心を捉えた言葉です。
サラリーマン主婦の扱う数字など小範囲ですが、暮らしを数字でつかみながら、税制の問題点まで学ぶ中で数字の持つ様々な顔を見てきたように思います。
Yasukoさん
「暮らしを数字でつかみましょう!」
おもしろい言葉ですね。
「生活を科学しましょう」も納得する言葉です。料理も洗濯も掃除も、化学とか科学とか数字とかかわる部分が大きいですよね。
もっと数字と仲よくなれたら楽しいのかなとも思うのですが、苦手意識もまだまだあります。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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